こんにちは
ハートフル総合歯科グループの野田裕亮と申します。

今回は前回に引き続き、分割歯牙移植についてお話させていただきます。

前回のブログでは実際の分割歯牙移植の手術について書かせていただきました。

前回のブログはこちら https://heartful-konkan.com/blog/dr_noda/19186

今回は手術後の流れについてお話させていただきます。

手術時ほとんどの場合、医療用接着剤にて隣の歯や固定用ワイヤーに固定を行います。
これは移植歯と移植床の間に血餅(かさぶた)ができ、歯周組織への治癒を進めるうえで、
動揺(歯の揺れ)によって治癒を妨げないようにすること。もう一つはMSBパック(眞坂式スーパーボンドパック)による手術部の傷の保護をねらって行っています。
(MSBパックとは https://heartful-konkan.com/blog/dr_noda/17049 )

固定期間にはいろいろな考え方があり、もう少し早い段階で固定を除去する先生もいらっしゃいますが、当院では4週間を一つの目安として固定期間を設けています。

手術後4週間は固定の為に縫合糸や接着剤の煩わしさがあるとは思いますが、移植歯の生着には必要な期間。

腕や足の骨折でいえばギプスをしている期間に似ているかもしれません。
術後1週間は歯ブラシを避け、4週間は患側で積極的に噛まないようにと指導させていただいております。

 

 

今回のケースの場合、元々左下には歯がなかったため、こちらでお食事をとらないことへのストレスは少ないようでしたが、

固定用の矯正ワイヤーが気になり、舌に口内炎をつくってらっしゃったので、もう少し違和感の少ないような固定を現在模索している最中です。

 

 

術後に比べ段々出血っぽさは引いてきているのが確認できます。

術後1週間が経ち、歯ブラシに関しては再開してもらいましたが、やはり磨きにくさはあると思います。

この時期は上からケアできる範囲での歯磨きをお願いしております。

歯間ブラシやタフトブラシなど固定部や移植歯に負担がかからないようにケアしてもらうように注意が必要です。

 

 

術後4週が経ち固定を外した状態がこちら。
4週間までは医療用接着剤が歯肉に触れてくっついていたため、手術時のまま凸凹した歯ぐきであることが分かります。

これは固定除去とともに段々治癒していきますのでご安心ください。それよりも必要なこと。それは動揺度です。

4週間固定の後、手術時と変わらない動揺が見られる場合は生着不良となり抜歯が必要となります。

経過が良好な場合、根管治療へ移行します。

根管治療後、土台を立てた状態がこちら。

 

 

歯牙移植直後の状態に比べて周りの歯肉も赤みが取れています。

揺れもだいぶ良くなってきました。
ただ、歯根を3分割し、なおかつ歯根が短いことからそれぞれを単独の歯として被せることは難しいため、連結冠として繋げた状態で被せていきます。

歯牙移植はインプラントに比べ骨幅も必要とされることから
適応症が限られ、インプラント以上に事前の診査診断、また成功率に関しても患者さんと相談をしたうえで計画を立てていかねばなりません。

 

しかし今回のケースのように歯根膜という歯根の細胞が健康で生着することができれば、
術前以上に骨がしっかりしてくることもあるのです。
人体って不思議ですよね。

次回は最終章。分割歯牙移植の被せ物についてお話させていただきます。

あなたの歯が1本でも多くの残せますように・・・

医療法人社団徹心会ハートフル歯科