こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書いております。
今回のテーマは、日常臨床において比較的多いと言われる深い虫歯と歯の神経のトラブルになります。

ある患者さんの臨床症例をご紹介します。

右上6番において、むし歯がかなり深く、治療時には神経(歯髄)に近い部分まで達していました。そこで、「間接覆髄」という処置を行い、なんとか神経を残す方向で歯に詰め物を入れる修復治療まで行いました。
間接覆髄は、神経がギリギリまで残せそうなときに行う、いわば“瀬戸際の選択”です。
幸いにもこの患者さんは治療直後は経過もよく、痛みもなく数年が経過していました。
しかし…
最近、この歯がなんとなく重たい感じがする
歯に違和感を感じる頻度が多くなった
実は数ヶ月前にも少し歯に違和感を感じるということで、診察したことがあったのですが、その時は歯の神経の生死(歯の生活反応の有無)を電気歯髄診と呼ばれる歯髄診断器を用いて測定したところ、患歯において生活反応があったため経過観察としました。
ところが、数ヶ月経過して再び上記の症状を感じるようになったため、不安になり再受診することにしたそうです。再度、電気歯髄診を行ったところ、神経の反応がなくなっていました
神経がダメになったサインと、見えない内部の変化…が起きていました。

天蓋除去していくと、歯の神経の入り口(根管口)が見えてきました。
根管治療を始めてみると、
歯の内部、根管口と呼ばれる神経の入り口付近から、腐ったような臭いが…
この「腐敗臭」は、神経が壊死して細菌感染を起こしたサインです。
歯の内部は目で見えませんが、このような臭いもしくは状態で、細菌の活動や組織の変化を感じることができます。
通常、歯の神経が炎症を起こして神経を除去するような抜髄の場合には、元々歯の神経には痛みなどを感知するセンサーの役割と共に歯に栄養を送るための血管が含まれています。そのため、根管口まで器具が到達すると出血が多く見られます。

ところが、今回のように歯の神経が死んでしまい、腐敗が起きてしまっているような状態においては出血はほとんど見られなく、ボソボソとした神経のカスのようなものが出てくることがあります。
↑上記の画像はまさにそのような感じであることがマイクロスコープ下でしっかりと確認できます。
↓下記の画像は、歯髄除去後です。神経のカスのような残存歯髄はなくなりました。

根管内を次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)を用いて、徹底的に洗浄・消毒を行いました。

根管の機械的拡大(根管清掃)まで終えて、洗浄・消毒を行った根管充填前になります。
根管内からの出血や排膿も見られませんでした。
治療開始から違和感もだいぶ少なくなり、ほとんど感じることもなくなったそうです。
根管内の状態も良好であり、痛みや腫れなどの症状も落ち着いていると判断しました。
いよいよ根管充填を行っていきたいと思います。

根管充填後です。
根管充填後、ファイバーコアによる支台築造(土台)を行い、被せ物はセラミック治療を選択され、無事治療終了となりました。
痛みや違和感も既になくなり、今後は経過観察になりました。

【考察】
なぜ神経はダメになってしまったのか?
・間接覆髄で神経を保護しても、深いむし歯により神経が長期的にダメージを受けていた
・目には見えない小さな隙間や、修復物の経年劣化によって細菌が侵入していた可能性
・歯は痛みがなくても、ゆっくりと静かに神経が壊死することがある
このように、最初はうまくいったように見えても、数年後にトラブルが出てくることもあのです。
根管治療は、歯を残すための「最後の砦」です!
根管治療は、
感染した神経や組織をきれいに取り除き、歯の根の中を消毒・封鎖する治療です。
決して“簡単”ではありませんが、
しっかり行えば、その歯を抜かずに使い続けるための強い味方になります。
基本コンセプトである無菌的処置、根管内細菌減少法、根管系の封鎖をしっかりと行うことに尽きると思います。
最後に、違和感は歯からの小さなサインかも…
「なんとなく歯がおかしい感じがする」
「今まで冷たいものでとてもしみていたのにしみなくなった」
特に治療歴のある歯に対しては、そんな違和感を感じた時は、ぜひ歯科医院でチェックを受けてみて下さい!
早期発見と適切な処置が、あなたの歯を守る第一歩になります。
神経を残す治療も根管治療も、それぞれに意味があります。
大切なことは、今の歯の状態に合わせた、最適な判断をすること。
患者さんと一緒に、その答えを探すのが私たちの役目です。

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『鞠躬尽力、死して後已まん』-諸葛孔明-
(きっきゅうじんりょくして、ししてのちやまん)
【ひたむきに己の全力を尽くし、死ぬまで止めない覚悟である】
この名言は謙虚さ、誠実さ、全力投球、後悔のない生き方、そして充実感を追求する精神
を伝えてくれる彼の卓越した哲学と人生観を示すものです。
「すべては患者様の笑顔のために」

医療法人社団徹心会ハートフル歯科