こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書いております。
今回は、新人オリエンテーションということで歯科医師として臨床だけではなく、教育という部分にも日頃取り組んでいることについて書いてみました。
4月に入り、新しいメンバーが入社してくれました♪( ´θ`)
先日、ハートフル歯科に新しく加わった新人スタッフ向けに、2時間のオリエンテーション講義を行いました。テーマは「根管治療について」です。歯内療法専門医の立場から、理事長の下田先生より、ラバーダム防湿の必要性、衛生的器具による根管治療、マイクロスコープの必要性について講義してほしいと依頼を受けました。昨年までは下田先生主体でオリエンテーションを行ってくれていましたが、今年度から私にも講義してほしいとのことでした。プレゼンテーションの準備が急すぎて忙しく少々寝不足になりながら、何とか無事にオリエンテーション当日までに講義用のプレゼンテーションをまとめることができました(笑)


普段、臨床で何気なく使っている器具や手技の“意味”を改めて見つめ直す良い機会にもなりました。
今回はその講義内容を、簡単ですがブログにも残しておきたいと思い、この3つの重要ポイントを共有しておきたいと考えました。

【1】ラバーダムは“当たり前”ではない──無菌的処置の基本
講義の冒頭では、「なぜラバーダムを使うのか?」という根本の問いから始めました。
歯内療法は無菌的環境をいかに維持するかがすべて。根管内は閉鎖空間であり、一度細菌が入れば治癒は遠のきます。
唾液や呼気、器具を介した細菌の侵入リスクを物理的に遮断するのが、ラバーダムの役割です。
新人さんには「めんどくさい道具」と映るかもしれない。でも、それを外せば治療の意味自体が失われる。
そんなメッセージを込めて、臨床写真とともに具体的な感染経路、海外の論文から成功率への影響も紹介しました。

【2】衛生的な器具管理とルーティンの大切さ
次に取り上げたのは、器具の衛生管理。特にファイルやバーなどの根管治療器具は、血液や組織片との接触があるため、交差感染のリスクも高い。
「洗浄→超音波洗浄→乾燥→滅菌」までのフローを図解で整理し、器具ごとの注意点を細かく確認しました。ここで伝えたかったのは、「技術の前に基本の徹底」です。どんなに優れた手技を持っていても、器具が清潔でなければ台無し。“清潔を保つ仕組み”を習慣として体に染み込ませることが、プロの入り口だと強調しました。

【3】マイクロスコープは“見えない”を“見える”に変える
最後に、現代の根管治療に欠かせないツールとして、マイクロスコープの意義を解説しました。
「肉眼では見えないものを、どこまで見えるようにするか」は、治療の精度に直結します。MB2、破折器具、イスムス、穿孔リペア──そのすべてにおいて、マイクロスコープは“診断力と治療力を同時に底上げする”武器”です。
講義中には、実際の症例を交えて裸眼とマイクロ下での違いについて見てもらいました。
皆が食い入るように画面を見ていたのが印象的でした。

最後に、「当たり前」の裏にある意味を問い続けましょう!ということを伝えました。
今回の講義を通して、器具や工程ひとつひとつに“理由”があるということです。そして、その理由を知ることで、自分の技術にも責任と自信が生まれます。

新人さんたちが、この講義を機に“見る目”を一段階深めてくれたらうれしい限りです。
私たちの治療は、「見えない根の中」で戦う医療。だからこそ、“見えるようにする努力”と“見えないものから守る意識”を、これからも大切にしていきたいと思います。

『鞠躬尽力、死して後已まん』-諸葛孔明
(きっきゅうじんりょくして、ししてのちやまん)
【ひたむきに己の全力を尽くし、死ぬまで止めない覚悟である】
この名言は謙虚さ、誠実さ、全力投球、後悔のない生き方、そして充実感を追求する精神を伝えてくれる彼の卓越した哲学と人生観を示すものです。
「すべては患者様の笑顔のために」

医療法人社団徹心会ハートフル歯科