エクストリュージョン(歯根挺出術)の症例①診断編
こんにちは
ハートフル総合歯科グループの野田裕亮と申します。
今回からのシリーズは以前お話した保存的治療法の中の一つであるエクストリュージョン(歯根挺出術)について診断編、手術編、治療編に分けてお話させていただきます。
以前の保存的治療についてのブログはこちら
今回は診断編について。
通常歯の保存ができるか否かの判断の一つに残存歯質量の問題があります。
フェルールといい、歯に被せ物を入れる際に、被せ物の縁よりも上に健康な歯質が高さ2mm(骨縁から5mm)、幅1mm、が必要だと考えられています。また無理に治療しても、精密な型取りを行うことができず、適合の良い被せ物が作れません。その結果は、被せ物と歯の間に不適合な隙間が出来て、そこからむし歯が再発してしまいます。
(以前掲載ブログより引用 http://www.e82.jp/blog/2019/11/part3-705373.html)
このフェルールを確保するために行う処置をエクストリュージョンといいます。別の方法にクラウンレングステクニックというものがありますが、これについてはまた別のブログにてご紹介します。
それでは一つの症例をご紹介します。
被せ物を入れてもらったが土台ごと外れてしまい、歯質が残っていないとのことで抜歯と宣告された患者さん。
拝見すると歯肉の中まで歯質を失っており、お持ちいただいた被せ物ももう元には戻りません。失った歯質の上に歯肉が乗っかってしまっている状態でした。根管治療も何度かされている歯のため歯質が薄くこのまま土台を立てれば確実に歯根が破折してしまうだろうとの判断で、エクストリュージョン(歯根挺出)を提案し、全体的に歯質が歯肉より上に引っ張れるようにし、感染歯質除去とともにしっかりとした土台が建てられるよう提案しました。幸い、歯根の長さは長く、歯周病も患っておらず骨植がいい歯だったため、患者さんも是非とのことで治療を開始しました。
感染歯質を除去し、エクストリュージョン用の器具の型取りを行います。
ここですべての感染歯質を除去できれば一番ですが、取り切ってしまうことで矯正器具をつけられなくなってしまうようであれば、引っ張った後に除去します。
後日出来上がってきた器具を取り付けていきます。
スムーズに歯が引っ張れるようにはもちろんですが、患者さんのお口の中の状況、審美的な要素も含めて技工士と打ち合わせをしながら設計を行います。
引っ張る歯にはフックを、隣在歯にはワイヤーをそれぞれセットします。
その後それぞれを矯正用ゴムで結び準備完了です。
ここから3〜4週間に一度ゴムを交換していきます。
それでは次回はこの3〜4週間後からのお話「手術編」にお話を進めようと思います。
抜歯と言われた歯でも歯根がしっかりしていればエクストリュージョン(歯根挺出法)を用いて保存を図ることができるかもしれません。ぜひご相談ください。