歯牙移植症例集2022②〜ポイント〜
こんにちはハートフル総合歯科グループの野田裕亮と申します。
前回は歯牙移植症例集②〜治療編〜として歯牙移植後の被せ物までお話させていただきました。
前回までのブログはこちら
(歯牙移植症例集2022②〜準備編〜 https://heartful-konkan.com/blog/20845 )
(歯牙移植症例集2022②〜手術編〜 https://heartful-konkan.com/blog/20853 )
(歯牙移植症例集2022②〜治療編〜 https://heartful-konkan.com/blog/20935 )
術前術後の写真がこちらです。
上からの写真
側方からの写真
移植の前と後で特に顕著に差があるのが
歯茎の状態だということがお分かりいただけますでしょうか?
移植したことにより、薄くなってしまっていた骨や歯茎にボリュームが出てきているのが
お分かりいただけるかと思います。
このボリュームが移植した歯を支え、そして清掃しやすい環境が維持されることで、
長く安定した経過が期待できると考えております。
それではこの安定した歯周組織を得るために、移植後の固定をずっとしていればいいのでは
ないかと思われる方もいるかもしれません。
当院で行う移植時二重固定の目的は
縫合の目的は
・創の閉鎖と移植歯に粘膜を寄せる。
・歯肉粘膜から歯牙が飛び出してしまわないために固定する。
医療用接着剤の目的は
・縫合した創の保護
・隣在歯に固定することによる移植歯の動揺の抑止
過度な固定、長期間の固定はアンキローシス(骨性癒着)を引き起こすので当院では
4週間の固定期間としております。
そのため、移植手術時には移植のオペの日程だけでなく、1週間後の消毒、
4週間後の固定除去までスケジュールを入れてもらっております。
また今回のケースでは移植前に根管治療を行っています。
これは根管治療により、元々の位置で歯の保存を図ろうと計画していたが、
歯根の状態により、抜歯を余儀なくされたため、移植候補となった経緯があったからです。
(元々の位置ではエクストリュージョンにより歯根を挺出すれば保存できる状態でした。)
通常、移植歯の根管治療は移植手術後に行うことが望ましいとされています。
移植前に根管治療のために歯を削ると移植歯摘出時に掴みにくくなるため、
歯根へ負担がかかってしまう。移植中に根管治療を行おうとすれば移植時間がかかってしまい、
歯根膜の細胞が死んでしまう可能性が高まってしまう。
そのため、移植後歯周組織の回復を待って根管治療を行うことが望ましいとされています。
今回のケースのように、歯牙移植は型に嵌めるのが難しい治療です。
移植歯の状態によって、手順を変えたり、術式を変えたり、治療期間を延長したり・・・。
生体が相手なので仕方がないことなのですが、だからこそ、今後も症例集として情報を
発信し続けていきたいと思っております。
あなたの歯が一本でも多く残せますように・・・。