外科的根管治療 状態の悪い歯を残す!②意図的再植、外科的挺出について
こんにちは!ハートフル総合歯科グループ 歯科医師 小坂井竜也です。
前回のブログは、シビアなケースである
歯肉に上に歯がない、
根っこの膿が大きい、
根っこが短い
という3要素が揃った歯をどうやって延命を図るか!というお話でした。
そこでの結論は、外科的根幹治療である
1.【意図的再殖】
歯肉の上に歯を頭出しする方法の
2.【外科的挺出】
の組み合わせを選択しました。
今回は、この1.2について説明していきます。
まず1の意図的再殖についてお話をしていきます。
この治療の簡単な考え方をお話していきます。
過去に根管治療をおこなっているケースで、治療を終えたにもかかわらず症状が改善されなかったり、
膿が大きく、膿胞化(膿みの塊の袋)してしまったケースに対応します。
どうしてこのように治療をしたのに症状が改善されないケースがあるかというと
根っこの先の2から3ミリには、「側枝」といって細かい管がたくさん存在し、
その部分が感染していたり、歯の外側の部分が感染してしまうと
通常の歯の中からの根管治療では、対応できなくなります。
その根っこの先や歯の外側の感染した箇所を直接とってしまおう!というのが
この外科的根管治療となります。
この治療は大きく2種類ありまして、
①歯根端切除術
②意図的再植という方法があります。
①は、歯肉側から直接アプローチして根っこの先や感染物をとっていきます。
②は①がむずかしいケースのときに、直接歯を抜いて根っこの先を除去して、感染物を取り除いて
歯を戻す治療になります。
このイラストのように奥歯の治療の場合が多いですね。
次は2.外科的挺出の話になります。
これは、過去にフェルールのお話をしたブログがあるので、くわしくはそちらを見て頂きたいのです。
簡単に説明すると、歯肉の上に歯が無い状態ですと、その歯が噛めるよう機能できないので
歯肉の歯質(フェルール)が必要となってきます。
この歯肉に埋まった歯をいったん抜いて、元の位置より浮かせた状態を作り、
治癒をまってフェルールを獲得する処置です。
このような形となります。
浮かしても、歯を支える膜(歯根膜)が残っていれば、再び骨と膜の結合が再生されていきます。
このケースは、根っこが一つまたは複数でも広がっておらず、抜くときに割れにくいケースか、
根っこがある程度長いケースに対して選択します。
しかし、一度抜くという侵襲を伴うので、ほかのフェルール獲得の選択肢である
MTMやAPFの先に来る選択にはなりにくいです。
今回のケースで、これらの選択をした理由の説明をします。
まずは外科的根管治療の意図的再植を選択した理由です。
右上5番、奥歯の手前の歯です。
レントゲンを確認します。
奥歯の手前の歯の根っこに丸い空洞のような影がみられます。
上顎洞というお鼻とつながる空洞とも近そうです。
CTでのみた状態です
黒い影の範囲は大きいですね!これが膿胞(膿みの塊)です。ここまで大きいと通常の根管治療では
なかなか治癒は難しくなります。しかし、上顎洞と膿みの距離は比較的余裕がありそうです。
また、根っこの先端もやや曲がっており、通常の根管治療では清掃しききれず
膿が再発してしまった可能性が高いと考えられます。
これらをふまえて、外科的根管治療は不可欠であると考えました。
さらに、歯質もないのでフェルール獲得の為の処置も検討しなくてはなりません。
ここで、治療期間や、侵襲の回数、患者さんの負担を考えると
治療回数の少ない、意図的再植を併用して同時に治療していくことを選択しました。
治療に対する選択や、診断の説明はこれで終わりになります。
次回は実際の症例に映ります!
全ては患者さんのために!