こんにちは。

ハートフル歯科のドクターM

本山です。

 

今回は、「糖尿病と歯科治療」について書いていきたいと思います。

糖尿病や高血圧は身近な病気ですから、当院に来院される患者様にも割と多く見られます。

糖尿病とは、インスリンが十分に働かないために血液中を流れるブドウ糖という糖(血糖)が増えてしまう病気です。インスリンは膵臓から出るホルモンであり、血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。

高血糖による症状としては、多飲・多尿・口渇・全身倦怠感などが発現して、重症化するとアセトン臭とともに意識障害に至ることがあります。また、合併症としては視力障害、神経痛、浮腫や動脈硬化症なども生じます。

糖尿病と歯科の関係としては、歯周病があります。歯周病は糖尿病の合併症の一つであり、歯周病患者の多くに糖尿病患者がいます。

血糖の濃度(血糖値)が何年間も高いままで放置されると、血管が傷つき将来的に心臓病や、失明、腎不全、足の切断のようなより重い病気(糖尿病の慢性合併症)につながります。また、著しく高い血糖はそれだけで昏睡などをおこすことがあります。

糖尿病は1型と2型に分類されます。

■1型糖尿病

インスリンを作っている膵臓のβ細胞が壊れてしまうことによってインスリン量が欠乏するのが原因です。若年者に多く自己免疫機序が発症に関わっているとされており、突然発症する傾向が強いと言われています。一度発症すると、必ずインスリン投与が必要になります。

■2型糖尿病

膵臓のβ細胞が疲弊することによってインスリン分泌不全が生じることが原因です。

成人の糖尿病の約9割が2型糖尿病です。生活習慣(喫煙、飲酒、運動不足、ストレス、肥満など)や加齢なども関与して中年以降に発症することが多いです。進行状況によってはインスリン治療が必要になることがあります。

歯周病は、歯周病細菌の感染による感染症です。歯周病を起こす細菌の多くは、グラム陰性菌と呼ばれる細菌群に属しています。この群に属している菌は共通して内毒素と呼ばれる毒素を産生します。この毒素は非常に強力であるため、歯周病が重症化して毒素が生体に入り込むようになると、私たちの体はこれを排除して何とか体を守ろうと努力します。重症化した歯周病では歯の周りの組織が弱くなって容易に出血するようになるため、歯周病細菌の塊が直接生体に入り込むようになります。この時、生体がこの細菌群の塊と接する面積がちょうど掌サイズになると見積もられています。つまり、掌の大きさの傷を負い、そこから毒素が体に入る状況が維持されます。この時、体を守る免疫システムを高度に活性化する物質を多量に産生します。特に、内臓脂肪組織でこの物質を多量に産生するようになると言われています。この物質こそがインスリンの効きを障害する物質(悪玉物質)と同じものであることが分かっています。つまり、何も高度に肥満を呈していなくても歯周病のような盛んに内毒素を産生する菌に多量に感染し、毒素が容易に体内に侵入する環境下では、体が毒素を排除する際に本来太った方の内臓脂肪で産生されインスリンの作用を障害する物質と同じ悪玉物質を作ってしまいます。それが同じようにインスリンの働きを障害してしまうため、血糖が下がりづらい状態になっていることがわかってきました。これにより、インスリンの作用不足が生じるため、血糖の管理が困難になります。歯周病をきちんと治療して内毒素を排除することで、悪玉物質の産生が低下するため血糖の改善が期待できると言われています。

一般に歯周治療で改善する糖尿病の検査値(ヘモグロビンA1c)の改善度は平均0.4%くらいと言われています。これは、糖尿病のお薬1剤分に匹敵するという人もいます。そのため、重度の歯周病を併発した糖尿病患者様は糖尿病そのものの管理の一環として歯周病を治療するとともに再発予防に努めることが大事になります。かかりつけ歯科医を定期受診することがとても大切であると言えます。

 

今日も一日頑張りましょう!

 

“すべては患者様の笑顔のために”

 

今後ともよろしくお願い致します。

 

本山 直樹

医療法人社団徹心会ハートフル歯科