欠損部位に対しての歯牙移植
こんにちは
ハートフル総合歯科グループの野田裕亮と申します。
今回は前回お話した「歯牙移植」の1例についてお話させていただきます。
左下の○部に乳歯の残存があったが割れてしまったとのことでご来院。移植について調べて来院いただいた患者さんで移植のリスクや術後の流れについて理解してくださり、移植を進めることになるました。事前診査により受容床の幅、ドナー候補の寸法を3次元的に計測して右上の親知らずが適応になることがわかり、それに向けての準備を行いました。
C T画像のデータと術前の診断用の模型により受容床の骨のどの部分にドナー歯を入れるための穴を開ければいいのかを事前にシミューレーションをして、3Dプリンターでサージカルガイドを作ります。(赤線は神経。シミュレーションをしておくことで神経損傷や血管損傷を防止でき、より安全に手術を行うことが可能です)
(インプラントのシミュレーションソフトのためインプラントの絵が書いてありますが実際は歯牙を移植します)
これがそのサージカルガイド
サージカルガイドによりどの方向にどの深さ掘ればいいのかがわかるため、より安全により侵襲性の少ない手術が可能になります。
手術中の写真は割愛しますが、術後2週間後の写真がこちら。
移植後は動揺をしているため、隣在歯に接着剤で固定をしておきます。
その後根管治療を行い、揺れの回復とともに被せ物へと進めます。
現在は仮歯の状態で止まっておりますが、揺れもなくお食事も違和感なく噛めています。
現状、患者さんの食事や発音、清掃性に問題はなさそうなのでこのまま最終的な被せ物に移っても大丈夫そうですが、歯牙移植の特徴の一つは歯を矯正で移動できることです。インプラントは手術後埋入したポジションを変更することはできません。被せ物のポジションを見越してインプラント手術を行うのが通常ですが、それでも当然骨の状態により安全なポジションにインプラント手術を行なわなければなりません。そのためケースによっては土台で角度をつけたり、被せ物で角度をつけることにより、自然に見せる必要があります。不自然な角度は清掃性で考えても不潔になりやすいので特別にケアが必要になります。
しかし、歯牙移植の場合は移植後骨の安定を待てばそれはご自身の歯。他の歯と同様矯正により歯並びを改善することができます。そのため、骨の状態的にこの角度にしか移植できないとしても移植した後矯正で理想的なポジションに移動することが可能になります。
これはインプラントにはない歯牙移植のメリットの一つと言えるでしょう。
歯牙移植をした患者さんすべての方にお話をしておりますが、
「歯牙移植で残した歯は患者さんご自身の歯。むし歯・歯周病のリスクはありますが、矯正で移動できたり、将来隣の歯がダメになった時にブリッジの土台としても十分使えます。
特別扱いはせず、他のご自身の歯と同じ様に大事にしてください」
とお伝えしています。
ご自身の歯でいつまでも変わらずにお食事ができるよう日々診療にあたっております。
何かあれば是非ご相談ください。