歯の根管に穴があいている②<MTAによるパーフォレーションリペア>(臨床症例)
こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書い
ております。
今回のテーマは、「パーフォレーション(偶発的穿孔)」です。
前回ブログからの続きとして、引き続き実際の臨床症例について解説させていただきたいと思い
ます。
【歯の根管に穴があいている①】
術前における右上2番の口腔内写真です。
メタルボンドセラミッククラウンの被せ物が装着され
ており、術前デンタルX線写真より土台には金属製の
スクリューポストが確認できます。
また、根尖部に境界明瞭な透過像(根尖病変)を認め
ます。根管治療を行うために、まず最初にこれらを除
去していく必要があります。
補綴物(被せ物)と土台の金属製のスクリューポスト除去後になります。
マイクロスコープによる直視画像です。
根管内にガッタパーチャと呼ばれる根管充填材が確認できます。
また、口蓋側歯肉に炎症による出血が多少認められます。
根管内に見えるガッタパーチャと土台の金属製スクリューポストに接着材料として使用されていた
セメントを除去していきます。
根管内における青緑に染まっている部分は、カリエスチェックと呼ばれるう蝕検知液によるもの
です。削除すべきう蝕象牙質感染層のみ染色する染まりすぎないう蝕検知液です。
染色部すべてを削除することにより、感染層のとり残し・削りすぎを防ぐことができます。
これらによって、根管内におけるむし歯を確認しながら、染色部を削除することで細菌減少に努
めます٩( ‘ω’ )و
接着材として使用されていたセメントの下にパーフォレーションと呼ばれる穿孔が認められます。
恐らく過去の治療であいてしまったものと推測できます。
これらが根尖病変の原因の可能性が高いと考えられます。゚(゚´Д`゚)゚。
穿孔部からの大量の出血は認められなかったため、少しホッとしました…
穿孔している穴の大きさと出血のコントロールが困難であれば、場合によっては保存不可と診断し
なければいけなくなるからです。
根管清掃・消毒を行い、ビタペックスを根管内に貼薬したところです。
ビタペックスは、水酸化カルシウムとヨードホルムを主成分としたパスタ状の根管充填材で、操作
性、到達性が良く、根尖まで緻密に充填でき、根端(尖)部歯周組織の治癒に対して好影響を与え、
優れたX線造影性も有しています。非硬化性の製材なので、乳歯の根管充填にも使用されていま
す。私は主に根管貼薬剤として使用しております。
1回目の治療では、補綴物・土台、根管充填材を除去しながら、根管内におけるむし歯も徹底的
に除去しました。
また、根管内を清掃・消毒して根管貼薬まで行いました。
最後に仮歯を作製して仮着としました。
お疲れ様でした♪( ´▽`)
2回目の治療になります。
異常出血もなく、根管内の状態も良好です♪( ´▽`)
根管充填前に最終仕上げを行います。
3%次亜塩素酸ナトリウムにて根管内を徹底的に洗浄します。
エンドアクチベーターにて振動・攪拌して洗浄効果を高めていきます。
根管拡大形成をしても、根管壁の35%以上はファイルが触れることができず、デブリやバイオフィ
ルムが残留しています。根管治療を長期的な成功に導くためには、十分な根管洗浄が不可欠です。
洗浄液を浸すだけの「静的」洗浄では十分とは言えず、洗浄剤を振動・攪拌させる「動的」洗浄に
より、象牙細管がより開口した表面となり、側枝や副根管の充填の封鎖性を高めると言われてい
ます。
MTAセメントを充填していきます。
MTA根管充填後になります。
緊密に伱間なく充填できました٩( ‘ω’ )و
マイクロスコープ直視下にてスムーズな充填ができたと思います。
前歯で単根なので、奥歯と比較しても処置しやすかったです。
MTA根管充填後のデンタルX線写真です。
根尖病変が元々大きいため、長期的な経過観察が非常に重要になってくると思います。
根管治療においては無事終了しました♪(´ε` )
今後の予定としては、ファイバーコアにて支台築造(土台)して、セラミッククラウンによる被せ
物が装着される予定になっております。
『鞠躬尽力、死して後已まん』-諸葛孔明-
(きっきゅうじんりょくして、ししてのちやまん)
【ひたむきに己の全力を尽くし、死ぬまで止めない覚悟である】
この名言は謙虚さ、誠実さ、全力投球、後悔のない生き方、そして充実感を追求する精神を伝え
てくれる彼の卓越した哲学と人生観を示すものです。
「すべては患者様の笑顔のために」