歯の根管に穴があいている①<MTAによるパーフォレーションリペア>(臨床症例)
こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書い
ております。
今回のテーマは、「パーフォレーション(偶発的穿孔)」です。
神経治療のような根管治療を行った歯に対して起こる痛みや腫れの原因の中に、パーフォレー
ション(偶発的穿孔)というものがあります。
「偶発的」という言葉は思いがけず起きることを意味しています。
つまり、意図的に起こしたものではなく、事故的な意味合いが強いと言えるでしょう。゚(゚´Д`゚)゚。
パーフォレーションとは、根管ではない別の部分に術者の意図しない状態、つまり偶発的に穴が
あいてしまった状態のことになります。
この偶発的にあいてしまった穴から細菌感染が起こり、炎症から根尖病変になり痛みや腫れを引
き起こすことがあります。
当院においても根管治療で来院される患者様の1/3程度の割合で見かける症例となっております。
パーフォレーションの原因には、下記に挙げられるものがあります。
①歯科治療中の偶発的穿孔
残存歯質が薄く、土台を除去する時のような歯を削る過程で穴をあけてしまうパターンが多いの
ではないでしょうか…
②重度のむし歯
③歯根の内部吸収
パーフォレーションの治療法としては、マイクロスコープなどの顕微鏡を使用した拡大視野下で、
水酸化カルシウム製剤やMTAを使用して、穿孔部を封鎖し治癒を促す方法になります。
パーフォレーション・リペアと呼ばれています٩( ‘ω’ )و
基本的にはパーフォレーションのある歯は、抜歯と診断されることが多いと思います。
穴の大きさや位置によっては保存不可と診断しなければいけない場合もあります。
但し近年ではMTAによるリペアも確立してきておりますので、歯の状態によっては他院で抜歯と
宣告された歯でも救うことができる症例もありますので、一度来院してご相談下さい♪(´ε` )
52才 女性
#7【右上2番(上顎右側側切歯)】
<主訴>
3ヶ月前に他院にて検診を受けた際に、レントゲン上で右上2番において根の先に膿がたまって
いるため再根管治療を行うことをすすめられたが、設備の関係で精密な根管治療はできないと言
われた。激しい痛みはないが、鈍痛のようなものを感じることがある。
<診断名(Diagnosis)>
・歯髄の状態【Pulp Dx】:
Previously treated(既根管治療歯)
臨床診断分類で当該歯は以前に歯内療法処置されており、根管は貼薬材やその他様々な根管充填
材にて充填されている。
・根尖歯周組織の状態【Periapical Dx】:
Symptomatic apical periodontitis(症候性根尖性歯周炎)
通常は根尖周囲組織の炎症であり、咬合、打診、触診に痛みを伴う臨床症状を呈し、根尖透過像
と関連する場合としない場合がある。
<治療方針(Recommended Tx)>
根管治療(Re-RCT)
今回は診査・診断における結果までまとめました。
次回以降、引き続き症例解説をすすめていきたいと思います٩( ‘ω’ )و
最後に、MTAセメントについて簡単に説明しておきます。
MTAセメントはアメリカで開発された歯科用セメントの一つで、様々な症例で評価を得ている薬
剤です。Mineral Trioxide Aggregate(ミネラル三酸化物)の略で、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二
カルシウム、二酸化ビスマス、石膏などが主な材料となっております。
MTAセメントに備わっている特徴についても、いくつか簡単に解説しておきますね♪(´ε` )
・高い殺菌効果がある。
・人体との親和性が高い。
・水分があってもしっかり固まる。
・固まるときに膨張するため、密封性が高い。
MTAセメントは強アルカリ性で高い殺菌効果があり、高い殺菌効果を持ちながらも、人体には安
心して使える素材になっております。
口腔内は常に湿った状態ですので、一般的な歯科に用いるセメントではうまく固まらないことが
あります。しかし、MTAセメントは水分が存在していてもしっかりと固まる性質があるため、口
腔内においては非常に適したものになっています。また、固まるときに膨張する性質もあり、伱間
なく埋めることができます。
MTAの高い性能が歯を救ってくれる可能性を飛躍的に上げてくれたことは明白と言えるでしょ
う。
近年の歯内療法(根管治療)には欠かすことのできない材料です(*´Д`*)
※日本の保険適用ではパーフォレーションリペアにおけるMTAの算定は認められていないため、
自費診療になることをご了承下さい。
『鞠躬尽力、死して後已まん』-諸葛孔明-
(きっきゅうじんりょくして、ししてのちやまん)
【ひたむきに己の全力を尽くし、死ぬまで止めない覚悟である】
この名言は謙虚さ、誠実さ、全力投球、後悔のない生き方、そして充実感を追求する精神を伝え
てくれる彼の卓越した哲学と人生観を示すものです。
「すべては患者様の笑顔のために」