歯の根管が閉鎖してあかない<石灰化根管・閉塞根管>(臨床症例)
こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書い
ております。
今回のテーマは、「根管の石灰化」です。
根管治療を困難にする状況に歯髄の石灰化が挙げられます。
歯髄の石灰化とは、根管治療において本来あるべきところに根管口と呼ばれる根管の入り口が見
つからず、硬く閉じてしまっていたり、中には存在しないかのごとく分からなくなっているものも
あります。また、根管内の途中で硬く塞がってしまい、治療器具が根尖まで届かないといった状態
です。歯髄の石灰化は、加齢や神経に対する外来刺激が長期に渡って及ぶ場合に生体の防御反応で
歯の根管を構成する象牙質が添加される現象と言われています。
外来刺激とは、例えばむし歯などの細菌における刺激や、歯が削られるなどの機械的刺激、神経
を保護する治療における薬剤の刺激、また歯をぶつけるなどの外傷による物理的刺激がありま
す。石灰化が進行したものにおいては、レントゲンでも根管の道筋が写らなく消えてしまったよう
に見えます。
63才 女性
#30【右下6番(下顎右側第一大臼歯)】
<主訴>
他院にて1ヶ月前から根管治療中。
根管が細くなっており、治療がなかなか進まないと言われた。
根の先付近を押すと痛みがあり、たまに違和感のような鈍痛を感じることがある。
かかりつけ医よりラバーダムやマイクロスコープなどの設備がある歯科医院にて治療を受けること
をすすめられて、当院を受診。
<診断名(Diagnosis)>
・歯髄の状態【Pulp Dx】:
Previously treated(既根管治療歯)
臨床診断分類で当該歯は以前に歯内療法処置されており、根管は貼薬材やその他様々な根管充填
材にて充填されている。
・根尖歯周組織の状態【Periapical Dx】:
Symptomatic apical periodontitis(症候性根尖性歯周炎)
通常は根尖周囲組織の炎症であり、咬合、打診、触診に痛みを伴う臨床症状を呈し、根尖透過像
と関連する場合としない場合がある。
<治療方針(Recommended Tx)>
根管治療(Re-RCT)
術中のデンタルX線写真です。
過去の治療において根管内に充填されていたガッタパーチャと呼ばれる根管充填材を除去後、根管
内の清掃・消毒を行いました。
やはり遠心根の歯根肥大が目立ちますね(*´Д`*)
本症例では、普段あまり見かけない遠心中央根管と呼ばれるMD根管(Middle Distal Canal)を
見つけました。近心中央根管と呼ばれるMM根管(Middle Mesial Canal)はよく耳にします。
MM根管は、下顎第一および第二大臼歯の近心根に存在する3つ目の根管です。
近年、相次いで発見が報告されており、年齢によるばらつきがあるものの、その出現率は下顎第
一大臼歯で20%程度、下顎第二大臼歯で10~20% 程度と言われています。位置的には、MM根管
は頬舌的にMB根管とML根管の間に位置します。MD根管も同様にDB根管とDL根管の間、中央付
近に位置します。
根管充填後のデンタルX線写真です。
「石灰化して根管があかない…」
石灰化においては、個々の歯によって状況が違います。
様々な状況が考えられます。根管口からすべて石灰化してしまい根管全体があかない場合、または
根管の途中からあかない場合もあるでしょう。あるいは根尖のほぼ手前まではあいている場合も
あります。それらによって根管内の清掃範囲が異なりますよね(*´Д`*)
当たり前ですが、清掃範囲が広がれば広がるほど根管内における細菌量は減ると言えます。
ラバーダム防湿などの無菌的環境下で適切な根管治療を行うことで病気は治りやすくなり、成功
率は確実に上がると言えるのではないでしょうか٩( ‘ω’ )و
『鞠躬尽力、死して後已まん』-諸葛孔明-
(きっきゅうじんりょくして、ししてのちやまん)
【ひたむきに己の全力を尽くし、死ぬまで止めない覚悟である】
この名言は謙虚さ、誠実さ、全力投球、後悔のない生き方、そして充実感を追求する精神を伝え
てくれる彼の卓越した哲学と人生観を示すものです。
「すべては患者様の笑顔のために」