論文が掲載されました⑨〜移植歯の根管治療〜
こんにちはハートフル総合歯科グループの野田裕亮と申します
この度、日本臨床歯科CADCAM学会で論文が掲載されました。
以前のブログはこちらから
歯科医師向けに書いた論文ですので何回かに分け
患者さんにもわかりやすいように解説をしています。
前回のブログはこちらから
前回までで移植歯の固定まで行いました。
今回は移植後の根管治療からのお話をしていきます。
デジタル歯牙移植術~歯牙移植術をDX化する~
ハートフル総合歯科グループ 野田裕亮
移植歯の根管治療
移植をする際、移植歯は口腔外に一度取り出し移植床へ移していきますが、
口腔外に取り出した時点で歯の神経は死んでしまいます。
そのため失活した神経から歯周組織へ毒素が出て行かないように、
移植後生着が確認できた時点で早めに根管治療へと移行します。
歯根が完成している移植歯の場合は100%根管治療が必要です。
移植歯を移植歯として選択した場合、
根管(神経のお部屋)はとても複雑です。
そのため、移植歯の根管治療はマイクロスコープを用いての精密なものがいいと考えております。
神経のお部屋を開け、根管内に水酸化カルシウムというお薬を入れ、
次回来院までしばらく置いておきます。
通常の根管治療の場合は中が虫歯になってしまっているので、
およその目安3~4回程度の根管治療の中で、根管を削り消毒をしを繰り返します。
しかし移植歯の根管治療は死んでしまった神経組織を除去したらそれ以上はを削る必要はありません。
その代わり、歯周組織の回復を助けるために、根管内をアルカリ性に保つ必要があると考えられています。
抜歯をしたり、炎症があったりする場所は破骨細胞といって骨を吸収させる細胞が活性化します。
破骨細胞は酸性下で活性化しやすいと言われているため、根管内にアルカリ性のお薬を入れることで、
破骨細胞の活性度を下げようという考えから水酸化カルシウムというお薬を根管内に入れるのです。
そして骨の回復を待って根管治療開始からおよそ4週間後に根管充填を行います。
ここまで
術後4週で固定除去
根管治療開始から4週で根管充填
この「4週間」というキーワードを私は大事にしています。
根管充填が終わったらいよいよ被せ物の治療です。
ここまでなが~く歯根完成歯についてお話をしてきましたが、もう一つ。
歯根未完成の歯のお話を。
歯根未完成の歯の場合は根管治療が不要になることがあります。
歯根の先端部に残った組織が移植後に分化し歯根を生長させてくれることがあるのです。
もちろん100%残せるわけではないので、移植後経過を追いながら歯根が生長しているか、
神経は生きたまま継続しているかの評価は必要になります。
しかし神経が生きたまま保存ができれば、歯を削らなくていいわけですから、
本当に歯が残せたも同然。
若年者で抜歯を迫られた時まず第1の選択肢に「歯牙移植」があるべきと私は考えます。
今回はここまで。
次回は歯牙移植後の被せ物のお話です。
あなたの歯が1本でも多く残せますように・・・