なんとか残したいの一心で・・・
なんとか残したいの一心で・・・
こんにちは
ハートフル総合歯科グループの野田裕亮と申します。
今回は久しぶりに歯牙移植の症例についてお書きしたいと思います。
昨年1月、60代女性で定期検診に通ってらっしゃる患者さんが、左上の被せ物が土台ごと
外れてしまったということで私が担当させていただくことになりました。
マイクロスコープで確認をすると、歯根は虫歯になってしまっており、ところどころ歯根破折の
亀裂が見えました。
抜歯の条件は十分に満たされるため、保存不可能と判断され抜歯されるべき歯でしょう。
一方で左下の奥は前から5番目以降の歯がなく、使いづらくて入れ歯をもう何年も使用していない
とのことでした。
おそらく今回外れてしまった被せ物の歯も下の噛み合わせの歯がないため、使えるまで使いましょう
という判断から経過観察をされていたことでしょう。
このままでは反対側の歯や、手前の歯に負担が次々にのしかかってしまい、歯根破折の負の連鎖が
進んでしまいます。
入れ歯も使えていないことから、本来であれば左下にインプラント治療を行い、
左側の噛み合わせを作り他の歯の負担を軽減させるのが通常の計画になると思いますが、
患者様がインプラント治療に前向きでないため、歯牙移植による噛み合わせの復元を
ご提案させていただきました。
もちろん歯根破折してしまっている歯の移植ですからそのまま移植することはできません。
ドナーとなる保存不可能の歯を分割し、骨植の良い場所へ移植できるよう、
シミュレーションから始めました。
C T診断や歯牙移植のシミュレーションの時点で無理があればそれは絵に描いた餅。
他の治療もそうかもしれませんが、「歯牙移植は準備8割、オペ2割」だと考えております。
・C T診断
・インプラントシミュレーションソフトによる移植埋設位置の確認
・サージカルガイドの製作
・歯牙レプリカの製作
・再生療法の併用
どれが抜けていても成功はしなかったと思います。
現在では歯牙移植を行ってから1年3ヶ月。
「今までよりも色々なものが噛めるようになった」「快適です」と喜んでお話してくれます。
次回からはこの分割歯牙移植に使用したそれぞれのシステムについてご紹介させていただきます。
「残せる可能性がある歯を簡単に抜くんじゃない」
私自身が診療する上で一番大切にしていることです。
歯牙移植を始めるきっかけとなった東京都ご開業の下地先生も同じようにおっしゃいます。
自分の歯で噛めることの幸せを是非、このブログを読まれている方々に知ってほしい。
そういった思いで今後もブログを書かせていただきます。
また是非お読みいただければ幸いです。