歯の根に膿が溜まって、顔面が腫れました<他院で抜歯と言われた>(臨床症例)
こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書い
ております。
今回のテーマは、「根尖病変」です。
根尖に病変があるような場合の根の再根管治療はおおよそ成功率は60~70%と言われています。
さらに、根管の形態がオリジナルのものから変化していたり、根尖孔自体が大きく開いて壊れてい
るような場合は、40%程度しか治癒に至る可能性がないとも言われています。
今回の症例は、術前デンタルX線写真より近心根管における根尖部に病変が認められました。
根尖病変とは、根管内の細菌感染によって生じた歯根周囲の病変です。
歯の根の先端部分(根尖部)に炎症によって膿が溜まっている状態であり、レントゲン写真やCT
画像上では黒い影のように見えます。
当然、根尖病変が大きければ大きいほど歯根周囲の骨が吸
収しているということになります。一般的に大きいものはやはり予後が悪いと考えられています。
根管内における細菌の除去および再感染を防止することによって、根尖病変の治癒を目指す治療
が根管治療になります。
49才 女性
#30【右下6番(下顎右側第一大臼歯)】
<主訴>
右下6番において、かかりつけ医にてレントゲン上根の先に膿が溜まっていることを指摘された。
再根管治療の必要性を説明されて根管治療を開始した。
ところが、治療後しばらくして右側頬部が
大きく腫れてしまい、休日診療を行っている歯科医院にて応急対応してもらった。
その後、仏痛や腫脹は落ち着いて現在に至る。
ラバーダムやマイクロスコープによる専門性の高い歯科医院にて治療継続を行うことを勧められて
当院を受診した。
本症例における右下6番(下顎第一大臼歯)は遠心舌側根まで認められる4根管でした。
下顎第一大臼歯の根管数に関しては、3根管と4 根管が多いと言われており、アジア人での出現率
は3根管が42~61%、4根管が30~58%であるという報告があります。
根管治療の難しさは、その歯の形態や根管の形態にあるといっても過言ではないでしょう。
当然、根管数が増えれば根管清掃や消毒における時間や治療回数もかかります。
そして、下顎第一大臼歯における遠心舌側根管は根尖付近で頬側方向に湾曲していることが多く、
さらに根管が細い傾向にあるため、ファイルと呼ばれる治療器具の破折が生じやすいと言われて
います。結果として難易度も上がっていきますよね。゚(゚´Д`゚)゚。
<診断名(Diagnosis)>
・歯髄の状態【Pulp Dx】:
Previously treated(既根管治療歯)
臨床診断分類で当該歯は以前に歯内療法処置されており、根管は貼薬材やその他様々な根管充填
材にて充填されている。
・根尖歯周組織の状態【Periapical Dx】:
Symptomatic apical periodontitis(症候性根尖性歯周炎)
通常は根尖周囲組織の炎症であり、伵合、打診、触診に痛みを伴う臨床症状を呈し、根尖透過像
と関連する場合としない場合がある。
<治療方針(Recommended Tx)>
根管治療(Re-RCT)
患歯は他院にて根管治療中の状態であり、術前デンタルX線写真より4根管認められ、いくつかの
根管にガッタパーチャと呼ばれる過去に充填されていた根管充填材がまだ残存していることが分か
ります。根尖性歯周炎と呼ばれる歯の根の病気の原因は細菌です。根尖歯周組織に細菌の感染が広
がり、その結果として歯根の尖端に炎症が起きて膿がたまった状態が起きます。根管内に充填され
ているガッタパーチャも感染しているため、再根管治療において根管の機械的拡大・清掃、消毒が
根の先まで行き届くように根管充填材を取り除き、根管を穿通させる必要があります。
数回の治療で、各根管において根尖まで器具が到達できるように何とか根管穿通することができ
ました。
根管内の細菌数減少には、根管における機械的拡大(清掃)・化学的洗浄(消毒)がとても大事
です。各根管において、根尖まで穿通して器具による清掃・拡大、次亜塩素酸ナトリウムとEDTA
による洗浄・消毒を徹底的に行いました。
4根管とも根尖までしっかりと根管充填材が入りましたね٩( ‘ω’ )و
『鞠躬尽力、死して後已まん』-諸葛孔明-
(きっきゅうじんりょくして、ししてのちやまん)
【ひたむきに己の全力を尽くし、死ぬまで止めない覚悟である】
この名言は謙虚さ、誠実さ、全力投球、後悔のない生き方、そして充実感を追求する精神を伝え
てくれる彼の卓越した哲学と人生観を示すものです。
「すべては患者様の笑顔のために」