歯が折れても抜かないで エクストリュージョンによる歯の保存
みなさんこんにちはハートフル総合歯科グループの野田裕亮です
歯が折れてしまったとき、抜歯と宣告されることが多くあります。
それは被せ物を入れるだけの歯質が残っていないから。
確かに残っている歯質の量が少ければ保存することは難しく、
抜歯になってしまうケースは少なくありません。
今回お話する治療法は歯根挺出術(エクストリュージョン)。
歯根歯質を垂直的に引っ張り、被せ物を被せるために必要な歯質量を
確保しようという治療法です
以前のブログでも何度か症例をあげながらこのエクストリュージョンという治療法についてご紹介してきました。
まだご覧になっていない方に向けて今回もご紹介していければと思います。
【エクストリュージョンの概要】
エクストリュージョンとは別名矯正的挺出法。
矯正力を使いながら歯肉の中の歯根を挺出して被せ物を入れられる歯質を確保する治療法です。
患者さんにはよく童話「おおきなかぶ」を例えにして治療法のお話をしています
人:引っ張るための固定限となる隣在歯
かぶ:引っ張るべき歯根
土:歯肉
引っ張る力:矯正力
といったところでしょうか
簡単なイラストを作ってみたので
こちらでご説明します
まず、このように
歯の頭を大きく失ってしまった歯があるとします
このまま被せ物を入れても噛み合わせの力を支えられないため、
保存不可能と診断されることもあります。
そこでエクストリュージョンの出番です。
歯根に矯正用ゴムを引っ掛けるフックを取り付け
隣在歯には物干し竿のようにワイヤーを取り付けます
それぞれの接着剤が固まったら矯正用のゴムを結び、歯根にテンションが掛かるようにします
ゴムの牽引の力により歯根を上方へ引っ張り上げます
ゴムの力も持続するものではないのでおよそ4週間に1度くらいの間隔で
ゴム交換を行います。
これが約8週間後の状態(間に1度ゴム交換を行う)
歯根は上方に挺出してきますが、それとともに周囲の歯肉も引っ張り上げられます
このまま矯正器具を外せば、歯肉の力により後戻りと言って、元の位置に戻ってしまいます。
歯根を挺出して位置で止めるためには、歯肉整形といって歯肉の位置をこの状態で
元の位置まで整える必要があるのです。
歯肉整形をした状態がこちら
歯を引っ張って、歯肉の位置を元に戻せば、これだけ歯質が出てきます
矯正器具をとり歯肉が落ち着いたら被せ物を入れて治療は終了です。
ここまでがエクストリュージョンの流れです。
次回は実際の症例をお見せしながら解説していきます。
あなたの歯が1本でも多く残せますように・・・