こんにちはハートフル総合歯科グループの野田裕亮と申します。

気を取り直して今回から歯牙移植症例集2022の第9弾となります。

今回は〜準備編〜

歯牙移植をする前の状態と歯牙移植のご提案までをお話していきます。

患者さんは右下の奥歯に噛むと痛みがあるという30代男性。

レントゲン上で大きな影が認められ、歯根破折を疑うような状態でした。

定期的に腫れも生じ、違和感も強いことから保存は難しい旨をお伝えし、

抜歯の選択を行うことになりました。

インプラントは費用面で選択が難しく、

また、両隣在歯は生活歯(神経の生きている歯)で

ブリッジするためになるべく削りたくないですとのことでした。

年齢的なことを考えると、歯牙移植という選択肢が取れればというところでしたが、

お口の中にまっすぐ生えた親知らずはなく、左下に埋伏している横向いた歯のみが

存在しているだけでした。

この辺りに埋まっています

埋伏歯を移植歯にする場合、心配なのは歯根膜が廃用性萎縮している可能性があること。

廃用性萎縮とは廃用性萎縮は、筋肉を長期間使わないことで生じる筋の萎縮です。

さまざまな心身の機能低下の事を指します。別名、生活不活発病とも呼ばれています。

主に怪我をしてギブスで寝たきり状態等で起こりやすくなります。

またこれにより、筋萎縮・関節拘縮・床ずれ・骨粗鬆症・起立性低血圧・精神的合併症・便秘などに

繋がりますので、筋のマッサージなどで萎縮を防止する必要があります。

(病院検索 ホスピタ より引用)

要はまっすぐ生えて噛み合わせている歯の場合、歯根膜という組織があることで

感覚受容器が働き噛み応えを感じたり、歯周組織の恒常性を担っています。

この歯根膜という組織が移植後の生着を大きく左右する大事な組織となります。

それが日の目を見ることのない埋伏歯の場合は機能をしていないために萎縮をしている

可能性があるのです。年齢が上がればその傾向は強くなると言われています。

今回のケースでは、他に対象となる移植歯候補がなかったため、

この非機能歯である水平埋伏歯を移植歯として計画することとなりました。

移植歯の形態、それを入れる移植床の形態は

C T、インプラントシミュレーションソフトにより物理的に移植歯が移植床に入るかを

移植シミュレーションをしっかりと行なっていきます。

歯根膜の弱さに関しては保健適応外となりますが、

歯周再生治療のお薬(エムドゲイン)を使用することにより、歯周組織の再生を

特に萎縮が心配される歯根膜の再生を図るために使用する計画を立てました。

また、移植床の形成に伴い、できるだけ過剰な骨の切削を避けるため、

歯牙レプリカを使用した移植を行うこととなりました、

次回は〜診断編〜

移植歯、移植床それぞれの状態と、

治療プランについてお話ししていきます。

保存不可能と言われた場合、

もしかしたら「保存的治療」によって治せる術があるかもしれません

抜いてしまうその前に一度ご相談ください。

あなたの歯が1本でも多く残せますように・・・

医療法人社団徹心会ハートフル歯科