こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書い
ております。
今回は、現在取り組んでいる「歯髄再生治療」について書いてみたいと思います。
歯髄再生治療において、大きなハードルが二つあると思っています。
一番目として、無菌化
二番目として、歯髄細胞移植(再生するか否か)
歯髄再生治療の場合、とりわけ通常の根管治療よりも無菌化ということに対してシビアにならな
ければなりません…
なぜならば、根管内無菌化が達成できなければ、歯髄細胞の再生における成功率が著しく下がる
ことは、誰が見ても明白ですよね?
私は、根管内の無菌化に四苦八苦しながらTRYしております٩( ‘ω’ )و

歯髄再生治療の成否を分ける「無菌化の極意」について秘伝の書物でもあればいいのですが…
これが本当に大変なんです( ́Д`)y━・~~
歯髄再生治療は、失われた歯髄組織を再生し、歯の生理機能を回復させる最先端の治療法です。
しかし、成功には「無菌的な環境」が不可欠であり、その確保が大きな課題となります。
1.根管内細菌の抵抗力
根管内は、複雑な形態を持つ三次元的な構造をしており、特に側枝やイスムス(狭窄部)には細
菌が残存しやすい環境があります。従来の根管治療では、機械的な拡大・洗浄と薬剤による殺菌
を組み合わせて細菌を減らしますが、それでも完全な無菌化は困難です。
歯髄再生治療では、無菌的な環境で幹細胞や成長因子を移植する必要がありますが、根管内に細
菌が残存していると、移植後に感染が再発して再生が阻害されるリスクが高まります。
2.バイオフィルムの問題
根管内に定着した細菌は、バイオフィルムと呼ばれる粘性の高い膜を形成します。バイオフィルム
内の細菌は、抗菌剤や洗浄液に対して耐性を持ちやすく、通常の消毒方法では完全に除去するこ
とが困難です。
特にエンタロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)は、根管感染において頻繁に検
出される細菌であり、バイオフィルムを形成しながら長期間生存することが知られています。この
ような耐性の高い細菌が残存すると、歯髄再生の成功率が大きく低下してしまいます。
3.無菌化のためのアプローチ
[徹底した洗浄・消毒]
現在、歯髄再生治療では、以下のような消毒プロトコルが採用されています。
次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl):タンパク質を分解し、細菌を死滅させる
EDTA(エチレンジアミン四酢酸):象牙細管内の汚染層を除去
・抗菌ナノバブル水:ナノバブル水に抗菌薬を混ぜることにより、複雑な根管形態に対して薬剤が隅々
まで届くとともに、象牙細管内の奥深くまで薬剤を浸透させて除菌することができる
4.根管内細菌培養検査の役割
根管内の無菌化が適切に行われたかを確認するために、根管内細菌培養検査が用いられます。
この検査により、治療前後の細菌数の変化を評価して、再感染リスクを低減できます。

(1) 培養検査の流れ
1.根管内から無菌的に検体採取(ペーパーポイントを使用)
2.培養液に浸して一定期間培養
3.細菌の有無を確認(コロニー形成の観察)
(2) 培養検査のメリット
治療の成功率向上:細菌の残存を早期に検出して追加消毒が可能である
再感染リスクの低減:細菌の種類や薬剤耐性を把握し、適切な消毒法を選択することができる
客観的な評価:消毒プロトコルの有効性を科学的に判断できる
5.まとめ
歯髄再生治療において無菌化は極めて重要であり、その達成には新たな技術とともに根管内細菌
培養検査による細菌管理が不可欠です。今後の研究と技術の進歩により、より確実な無菌環境の
確保が可能になれば、歯髄再生治療の成功率向上につながるでしょう(*’ω’*)
『鞠躬尽力、死して後已まん』-諸葛孔明-
(きっきゅうじんりょくして、ししてのちやまん)
【ひたむきに己の全力を尽くし、死ぬまで止めない覚悟である】
この名言は謙虚さ、誠実さ、全力投球、後悔のない生き方、そして充実感を追求する精神を伝え
てくれる彼の卓越した哲学と人生観を示すものです。
「すべては患者様の笑顔のために」

医療法人社団徹心会ハートフル歯科