自家歯牙移植の症例① 診断編 〜移植をするその前に〜
こんにちは
ハートフル総合歯科グループの野田裕亮と申します。
前回までは歯牙移植の治療法について、成功率をあげるポイントについてご紹介させていただきました。今回からは実際の歯牙移植の症例についてご紹介させていただきます。
今回の症例は左下の7番目の歯(親知らずの1本前の歯)のむし歯が大きく、保存ができないという診断で抜歯の宣告を受けた患者さんです。
レントゲンから親知らずの形と患歯の形態が似ていること、親知らずの根の状態が真っ直ぐな単根(根っこに分岐がない)が予想されることから歯牙移植という方法をご提案しました。もちろん成功率100%という治療ではありません。患者さんとも治療のリスクや成功率、歯牙移植を含めた治療の流れについて何度か打ち合わせをし、自家歯牙移植を行うこととなりました。
水平に埋伏している親知らずのため、親知らずの根っこが神経や血管に近接していないかの確認、またドナー歯と受容床(移植歯を植える場所)のサイズが見合うかの確認をC T場で確認を行います。
今回の場合、ドナーの歯の形態やサイズに関しても受容床にしっかり入る大きさであったこと、また保存不可能ではありましたが根尖病巣(根の周りの骨が溶けてしまう状態)にもなっていなかったため、移植後の経過も良好なことが予想されます。
移植の予後を左右する1番のポイントは「歯根膜」の状態です。
歯根膜とは歯と歯槽骨の間に存在する組織で、噛んだ感覚「噛みごたえ」として機能するだけでなく、歯周組織の再生に携わる重要な組織です。
親知らずを含めドナー歯を抜く時には、この歯根膜をいかに傷つけずに抜歯ができるかが移植後の予後に大きく影響するといっても過言ではありません。
今回のドナー歯は水平埋伏の親知らず。通常水平に埋伏している親知らずは、歯茎を切開し、周りの骨を削らないと抜歯できないことが多いです。しかしその術式ではドナー歯に対しての負担が大きすぎる。
そこで今回、保存不可能な手前の7番を抜いて、抜いた穴からドナー歯(親知らず)を抜歯する計画を立案しました。
実際の治療については次回のブログでご紹介します。歯牙移植によって一人でも多くの方の歯が残せれば幸いです。
ご不明な点があれば是非ご相談ください。