なるべく歯の根っこ(歯根)を残すためにー根管治療をする前にスクリューピン(土台)除去
こんにちは。
いつもありがとうございます。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師 井上貴史です。
なるべく歯の根っこ(歯根)を残すために!
根管治療をする前処置にあたる、スクリューピン(土台)の除去について書きたいと思います。
今回は歯の根の治療(根管治療、歯内療法)を経験している歯に再根管治療をする症例です。
根管治療を行うためには、まずスクリューピンを除去しないといけません。メタルコアやレジンコアなども同様です。それは根管口(根の中の入口)を確認しアプローチするためです。被せ物(セラミッククラウン、ジルコニアクラウン、銀歯など)や土台を除去しないとできません。
今回は、左下の第二小臼歯(前から5番目の歯)のレントゲン診査により、再根管治療が必要と診断しました。小さい銀歯は外れていて、金属のスクリューピンが確認されました。
そもそもこのように神経のない歯(根管治療後の歯)に部分的な銀歯を入れてしまうことは、歯冠破折の原因となるために、私は、行なわないようにしております。
金属のスクリューピンを除去するにあたり、金属が口腔内に金属片が飛び散らないようにラバーダムを装着します。ラバーダムは、歯質が残っていることが条件です。
次に、金属のスクリューピンの周囲にコンポジットレシン(白いプラスチック)があるため、
マイクロスコープ(=手術用顕微鏡)を使用しながら慎重に除去します。細かい作業になるため、マイクロスコープは欠かせません。
具体的な作業手順です。
金属のスクリューピンを除去するための専用の超音波チップ(意外と使われていません。)を使用します。超音波の振動を利用して金属のスクリューピンを回転させ除去を試みます。金属製のスクリューピンのタイプはネジ形状のため反時計回りに円を描くように超音波チップを金属のスクリューピンの周りに当てるのがポイントです。振動はありますが、強い痛みはありませんのでご安心ください。必要であれば麻酔もします。数分間、超音波で振動を与えると、ネジが浮いてくるように回転しながら金属のスクリューピンが動き出します。
上の画像は超音波チップを使用してスクリューピンを除去したものです。
スクリューピンの除去をする際のポイント
1、マイクロスコープを使用して、不用意に歯質を削らない。
2、超音波のチップを使用して、振動を利用してスクリューピンを浮かせて除去する。
注意:削り倒して、スクリューピンを取るのは、なるべく避けるようにしています。「なるべく削らない」というハートフルの医院理念を基に診療を行っています。
3、ラバーダムを使用する。
担当歯科医師の判断のもとに、ラバーダムの使用するタイミングは異なります。この場合のラバーダムは、細菌の混入の防止の意味は、少なくなります。しかし、隣在歯の方向から、患歯の根っこの方向を予想します。ラバーダムを使用すると隣在歯が見えなくなり、指標が失われます。間違った方向に歯質を削らないために、あえてラバーダムをしないという選択もあります。なるべくご自身の歯質を削らないで済むように工夫して治療を行っています。ラバーダムをしない理由には、歯質の残存量、隔壁(URL)が作れなかったりなどがあります。
ご不明な点は担当の歯科医師にご相談ください。
今後ともよろしくお願いします。
井上貴史