こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書い
ております。

今回のテーマは、「根尖病変の予後」です。
根尖病変とは根管内に細菌感染が起こることにより、歯根周囲の骨組織が吸収され膿がたまった
状態を言います。一般的には、根尖病変に対する治療法は根管治療が適応となります。
病変が大きい場合や根管の形状が複雑な場合には、治癒が難しくなる傾向にあります。
大きな根尖病変は小さなものに比べて、やはり治療後における縮小傾向から骨再生、あるいは瘢
痕治癒を確認できるまでの期間が長いことが報告されております。
根尖病変のある歯に対して適切な根管治療を行い、根管充填処置(根尖孔の閉鎖)が正しく行われ
ていれば患者自身がもっている免疫と呼ばれる治癒力によってその病変は大きさとは関係なく、い
ずれ(1~4年以内)消滅すると以前に教わった記憶があります。
根尖病変と呼ばれる歯の根の先に膿がたまっている状態について、根尖病変の予後がExcellence
(経過良好)の場合とは、どのように判断するのでしょうか?
ヨーロッパにおける歯内療法(根管治療)のガイドラインの基準によると、根管治療終了から4年
後までに、レントゲン上における根尖部X線透過像(根の先の黒い影)の完全な消失をもって「成
功」と定義されているそうです♪( ´θ`)

35才 男性
#10【左上2番(上顎左側側切歯)】
<主訴>
左上2番において、数日前から鈍痛と違和感を感じるようになり、近医を受診した。
歯の根の先に膿がたまっていると言われ、根管治療をすすめられた。
ラバーダムを用いた無菌的処置やマイクロスコープによる精密根管治療を希望して当院を受診。

<診断名(Diagnosis)>
・歯髄の状態【Pulp Dx】:
Pulp necrosis(歯髄壊死)
臨床診断分類では歯髄が壊死している事を示す。歯髄は通常、歯髄検査に反応しない。
・根尖歯周組織の状態【Periapical Dx】:
Asymptomatic apical periodontitis(無症候性根尖性歯周炎)
炎症と根尖周囲組織の破壊を伴い、それは歯髄・根管に原因があり、根尖透過像として視認でき、
そして臨床症状を示さない。
<治療方針(Recommended Tx)>
根管治療(RCT)

ファイル試適です。
歯の根の長さをレントゲン上においても確認しています。
根管治療において、根管内の機械的拡大と呼ばれる根管清掃には作業長の決定(根の先までの長
さ)というステップが必要になります。
私たちが根尖の位置を確認する一番精度が高い方法が電気的根管長測定器と言われています。
だだし、その精度は80%ぐらいとも言われています。
実際の根尖孔がレントゲン的根尖と一致する割合は50%程度で、その他は根尖の傍らに存在す
るという報告があります。当院では、必要に応じてレントゲン撮影を行い、ファイルと呼ばれる根
管清掃器具が根の先からオーバーしていないかなどをチェックする目的で確認作業として実施する
ことがあります。根管における機械的拡大形成は創傷の治癒の観点から根尖を超えての器具操作を
行ってはいけないためです。通法に従って作業長はAPEXと呼ばれる根尖から-1㎜の長さに設定
します。

根管充填後のデンタルX線写真です。
現在、メインテナンスにて経過観察中です。
根尖病変が縮小、そして消失するまで見届けたいと思います٩( ‘ω’ )و

『鞠躬尽力、死して後已まん』-諸葛孔明-
(きっきゅうじんりょくして、ししてのちやまん)
【ひたむきに己の全力を尽くし、死ぬまで止めない覚悟である】
この名言は謙虚さ、誠実さ、全力投球、後悔のない生き方、そして充実感を追求する精神を伝え
てくれる彼の卓越した哲学と人生観を示すものです。
「すべては患者様の笑顔のために」

医療法人社団徹心会ハートフル歯科