歯の根の先に膿がたまっている感染根管治療<歯茎にできる膿の袋>(臨床症例)
こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書い
ております。
今回のテーマは、「歯茎にできる膿の袋(sinus tract)」です。
歯の根の先付近にできる歯肉が腫れている状態であり、にきびや水ぶくれのような見た目をしてい
る歯の根の周囲にできる膿の袋や膿の出口のことをsinus tract(サイナストラクト)もしくは
fistel(フィステル)と呼びます。瘻孔とも言われています。
潰れると膿が出てきますが、感染している根管に対して適切な治療を行わずに放置していた場合、
膿の袋が潰れたり膨らんだりの繰り返しになります…
sinus tract(サイナストラクト)の原因はいくつか考えられますが、主に4つの原因に分けられま
す。
①感染根管
むし歯によって歯の神経が細菌に侵されて、根管が感染している状態です。
②不適切な根管治療
適切な根管治療が行われておらず、不十分な根管治療で終了していることで根管内で再び細菌が増
殖して膿がたまっている状態です。
③外傷
転倒などによって歯にヒビが入ってしまい、そこから細菌感染が起こり炎症から結果として歯髄壊
死してしまいます。
④歯根破折
歯軋りや食いしばりなどによる歯に対して強い伵合力がかかると歯根が割れてしまい、割れた部
分から細菌が侵入して細菌感染してしまいます。
術前デンタルX線写真です。
35才 男性
#19【左下6番(下顎左側第一大臼歯)】
<主訴>
歯肉が腫れていて、歯の根の先に膿がたまっていると言われている。
他院において根管治療中で5回ぐらい治療を受けた。
膿の袋ができたり、つぶれたりすることをしばらく繰り返している。
<診断名(Diagnosis)>
・歯髄の状態【Pulp Dx】:
Previously initiated therapy(既歯内療法開始済み歯)
臨床診断分類で当該歯は以前に部分的な歯内療法処置(断髄や抜髄)を受けている。
・根尖歯周組織の状態【Periapical Dx】:
Symptomatic apical periodontitis(症候性根尖性歯周炎)
通常は根尖周囲組織の炎症であり、伵合、打診、触診に痛みを伴う臨床症状を呈し、根尖透過像
と関連する場合としない場合がある。
<治療方針(Recommended Tx)>
根管治療(RCT)
根管充填後のデンタルX線写真です。
適切な根管治療を行うことで、sinus tract(サイナストラクト)は消失します。
「根管内に細菌を持ち込まない」
やはり根管治療における基本コンセプトの遵守が大事ですね♪( ´▽`)
再感染させないように、根管治療を行う際にはラバーダム防湿による無菌的環境下で処置するこ
とが望ましいと言えるでしょう。
『鞠躬尽力、死して後已まん』-諸葛孔明-
(きっきゅうじんりょくして、ししてのちやまん)
【ひたむきに己の全力を尽くし、死ぬまで止めない覚悟である】
この名言は謙虚さ、誠実さ、全力投球、後悔のない生き方、そして充実感を追求する精神を伝え
てくれる彼の卓越した哲学と人生観を示すものです。
「すべては患者様の笑顔のために」