こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書い
ております。

今回のテーマは、「抜髄治療の重要性」です。
まず最初に我が国における日常臨床において、抜髄と呼ばれる最初の神経をとる治療と根管治療
のやり直しをする再根管治療ではどちらの方が多いと思われますか?
私はやはり圧倒的に再根管治療を行うことがほとんどです。゚(゚´Д`゚)゚。
一般的に抜髄治療の成功率が高ければ、再根管治療の頻度は少なくなると考えられます。
つまり、むし歯による抜髄や歯髄壊死のような根管治療が多くなるはずなのですが…
ところが、現状はそうではないのが大半ではないでしょうか?

今回は、抜髄治療をマイクロスコープを用いて顕微鏡下で拡大して、かつ明るい術野を確保しなが
ら、ラバーダムを使用した無菌的環境下でしっかりと行いました。
それらによって、根管内がキレイになったことを確認して根管充填しました。
その結果として、不良根管がなくなり再根管治療を減らしていくことが可能になります。
つまり、「何事も最初が肝心」というお話です

48才 女性
#19【左下6番(下顎左側第一大臼歯)】
<主訴>
左下6番において、数日前に歯の遠心部分がむし歯で欠けてしまった。
冷たいものや温かいものがしみて、ズキズキとした拍動痛を感じることがある。
歯の内部にある神経と血管のことを総称して歯髄と呼びます。 むし歯菌が歯髄に侵入すると、血
管に炎症を起こし、血流を増加させて神経を圧迫します。 その結果、ズキズキとした痛みである
「拍動痛」が生じてしまいます。

<診断名(Diagnosis)>
・歯髄の状態【Pulp Dx】:
Symptomatic irreversible pulpitis(症候性不可逆性歯髄炎)
主観的・客観的な臨床所見に基づき、生活歯髄に炎症が生じていて治癒が得られない状態であ
る。加えて温度刺激による長引く痛み、自発痛、関連痛がある。
・根尖歯周組織の状態【Periapical Dx】:
Symptomatic apical periodontitis(症候性根尖性歯周炎)
通常は根尖周囲組織の炎症であり、伵合、打診、触診に痛みを伴う臨床症状を呈し、根尖透過像
と関連する場合としない場合がある。

<治療方針(Recommended Tx)>
根管治療(RCT)

ML(近心舌側根管)が見つからなかったのですが…

根管の見落としは、マイクロスコープによって解消することができます♪(´ε` )
歯科治療は、肉眼では捉えきれない細かい部位における作業の連続になります。
はっきりと見えない部分を経験と勘に頼って行えば、予後の悪い結果になることは明白です…
精密な診断や精密な治療によって、感染源を除去して再治療をなくすことは、ご自身の歯を長期に
維持することになり、口腔内の健康をより良い状態で保つことにつながると言えるでしょう。

マイクロスコープによって、解剖学的に想定される根管口(根管の入り口)付近を慎重に探索して
みることで、発見することができました٩( ‘ω’ )و
根管内の洗浄や消毒には、2つの薬剤の特徴を活かして根管内をキレイにしていきます。
①次亜塩素酸ナトリウム
②EDTA(Ethylen Diamine Tetraacetic Acid)
これら2つの薬剤を用いて、根管内を洗浄することを交互洗浄と呼びます。
次亜塩素酸ナトリウム溶液は、強力な抗菌作用と抗ウイルス作用を有していることから、最も効果
的な根管洗浄剤として長い間使用されております。 次亜塩素酸ナトリウム溶液は有機質溶解作用
を有していることから、細菌や歯髄の残渣(神経の残りカス)などを溶かすイメージです。
EDTAは無機質溶解作用を有しており、スミヤー層と呼ばれる根管内における機械的拡大清掃
(ファイルと呼ばれるヤスリのような器具で清掃すること)で生じた象牙質の削りカスを除去す
ることが目的であり、接着作業の妨げになることを防げるほか、スミヤー層に存在している細菌
を取り除くことができます。

根管充填後のデンタルX線写真です。

『鞠躬尽力、死して後已まん』-諸葛孔明-
(きっきゅうじんりょくして、ししてのちやまん)
【ひたむきに己の全力を尽くし、死ぬまで止めない覚悟である】
この名言は謙虚さ、誠実さ、全力投球、後悔のない生き方、そして充実感を追求する精神を伝え
てくれる彼の卓越した哲学と人生観を示すものです。

「すべては患者様の笑顔のために」

医療法人社団徹心会ハートフル歯科