みなさんこんにちはハートフル総合歯科グループの野田裕亮です

 

今回から歯牙移植症例集2024の第2弾をお送りします

今回お送りする歯牙移植は失活歯(根管治療済みの歯)を移植する移植術となります

 

移植をする条件として

・移植歯(ドナー歯)の条件

・移植床の条件

・患者さんの条件

があることは以前のブログでお伝えしました

 

詳しくはこちらをご覧ください

歯牙移植の条件 歯牙移植に向く人向かない人 〜移植歯(ドナー歯)の条件とは〜

歯牙移植の条件 歯牙移植に向く人向かない人 〜移植床(レシピエント歯)の条件とは〜

歯牙移植の条件 歯牙移植に向く人向かない人 〜患者さんの条件とは〜

 

その中で移植歯の条件として以前紹介したのは

移植歯(ドナー歯)の条件

 

・歯根膜の状態

健全な歯根膜が歯根についていることが絶対条件

ドナー歯が歯周病により歯周組織が破壊されてしまっていたり、アンキローシスといって

骨に癒着を起こしてしまっている場合は当然歯牙移植には向きません。

また、ドナー歯の抜歯の際に歯根膜を傷つけてしまってはその後の予後に関わるために、

後で触れますが、愛護的な抜歯が必要となります。

 

・歯根の形態

単根で湾曲のない歯根が望ましい

望ましいなので絶対条件ではありませんが、ただでさえ煩雑な歯牙移植を単純な手術にするかを

考えたときにとても大事な要素となります。ドナー歯摘出時における歯根破折、歯根膜剥離の

リスクや移植床に移植して手術を終えるまでの時間は手術そのものの成功率に関わる大事な

ポイントです。

「より単純な歯牙移植のためにはより単純な歯根形態」

を常に気をつけ、時には反対側から移植することも視野に入れて計画を立ててもらいましょう

 

・歯根の完成度

歯根未完成の移植歯の場合、根管治療が不要になることがある

基本的に歯牙移植を行う際にドナー歯は神経が死んで(失活)しまいます。

失活による破歯細胞(歯を吸収させる細胞)を活性化が、歯周組織の再生を妨げる恐れが

あることから通常移植後に根管治療を行うことが一般的です。

しかし、歯根未完成歯の場合、歯小嚢(歯根に変わっていく組織)が残存していれば歯根の

生長が期待できるため、根管治療が不要になることもあります。

このことから若年者の場合、歯根の完成度も今後の治療計画を左右するので相談してみて

ください。

 

・歯髄の感染の有無

歯髄感染から根尖性歯周炎への波及による歯根膜のダメージ(生活歯が望ましい)

根尖性歯周炎を起こしている失活歯の場合、歯周組織が破壊されているため、歯根膜の再生が

見込めないことがあり、歯牙移植の成功率を下げてしまう恐れがあります。

事前に根管治療を行い、歯周組織の回復を待ってから歯牙移植を行うことが望ましいでしょう。

また失活歯(神経のない歯)は移植時に歯根破折を起こしやすいため、生活歯以上に抜歯時の

歯根破折に注意が必要です。移植歯を選ぶ際はなるべくリスクの少ない歯を選びましょう。

 

そうこの最後の一文でも書いた

絶対条件ではありませんが、移植歯として選ぶ親知らずは生活歯であることが望ましいんです。

抜歯時に折れてしまったら即移植中止ですからね。

 

しかし今回の患者さんは移植歯として使える親知らずが失活歯(根管治療)済みの歯だったため

術中の移植歯の破折のリスクを十分ご説明した上で移植の選択をすることとなりました。

レントゲン写真は術前のもの。

手前の保存不可能歯は歯根破折を起こし、骨にも炎症が波及してしまっています。

 

今回の移植は「抜歯後待機移植」を選択し

抜歯後移植床の回復を待ってから移植へ進む計画を立てました。

 

 

実際の処置は次回からお送りします。

 

あなたの歯が一本でも多く残せますように・・・

 

医療法人社団徹心会ハートフル歯科