こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書い
ております。

今回のテーマは、「破折ファイル除去における診断と意思決定」です。
前回ブログからの続きとして、引き続き実際の臨床症例について解説させていただきたいと思い
ます。
【根管内に折れた器具が見つかりました①】

本症例は、根管治療の難易度が上がり、治療を困難にさせるうちの一つとして根管内に破折ファイ
ルのような折れた器具があることで、それが障害になり治療用器具が届かずに清掃困難になる場
合でした。

MB根管におけるマイクロスコープによる顕微鏡下拡大画像になります。
湾曲根管の根尖部にさしかかるカーブの入り口付近に破折ファイルと思われる金属片をはっきり
と視認することができます。結果として、破折ファイル除去は見送りました…。゚(゚´Д`゚)゚。
<破折ファイルを除去しなかった理由>
MB根(近心頬側根)において、破折ファイル除去を試みましたが、破折ファイルの位置が湾曲根管
の根尖部にあるため、除去時に発生しうるリスクを考えた時に、これ以上行うと合併症として根
尖部付近において保存すべき歯質を過剰に削ってしまい穿孔を起こしてしまう可能性が非常に高い
と判断したからです。歯根破折を引き起こす可能性を上げてしまうかもしれません。
本末転倒ですよね_:(´ཀ`」 㲃):
また、破折ファイルの上まで根管清掃・消毒をしっかりと行ったことで違和感のような症状も消
失していたことも判断理由の一つになりました。
結果として、破折ファイル除去には至りませんでしたが、私の判断を患者様に説明して御理解いた
だきましたので、根管充填まで終えることができました。


根管充填後のデンタルX線写真です。

最後に本ブログで私が伝えたかったことをまとめさせていただきます。
根管治療を行う上で最も重要なことは根尖性歯周炎を「治す」こと、そして「予防」することです。
根管治療の目的について、改めて再確認してみましょう!
なぜならば、破折ファイルの除去における意思決定には根管治療の目的について考えることが、
とても重要だからです。
根管治療には、イニシャルトリートメント(抜髄治療)とリトリートメント(再根管治療)があり
ます。私たちは、抜髄根管においては根尖病変を作らないように生理的な根尖孔を閉鎖させること
に努める必要があります。また感染根管治療と呼ばれるリトリートメントにおいては、起炎因子の
徹底的な除去に努めることで根尖病変を治して治癒へと導き、最終的に歯の延命効果を図ること
につながっていきます。そして、口腔内において歯を長持ちさせることは、機能面の回復を果たす
ことになります。
結論として、破折ファイルが根管内の起炎因子(感染の原因となるもの)ではないのであれば、破
折ファイルの除去をする必要はないということです。起炎因子が除去できなく、破折ファイルが原
因と考えられるならば除去すべきであるということです。但し、破折ファイルの除去を行うにあた
り、リスクと予後の関連性について天秤にかけながら、かつ術者のスキルなども考慮してバランス
のとれた意思決定を行うべきであるのではないでしょうか٩( ‘ω’ )و

『鞠躬尽力、死して後已まん』-諸葛孔明-
(きっきゅうじんりょくして、ししてのちやまん)
【ひたむきに己の全力を尽くし、死ぬまで止めない覚悟である】
この名言は謙虚さ、誠実さ、全力投球、後悔のない生き方、そして充実感を追求する精神を伝え
てくれる彼の卓越した哲学と人生観を示すものです。
「すべては患者様の笑顔のために」

医療法人社団徹心会ハートフル歯科