こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書いております。

―歯内療法専門医が実際に行っていること―


今回のテーマは、「歯髄再生治療」です。
「神経を抜かなくて済む方法はないですか?」

この質問を、外来で患者さんから頻繁にいただくようになりました。歯髄再生治療・歯髄移植という言葉がSNSで広がるにつれて、関心を持つ患者さんが確実に増えています。
私自身、中島美沙子先生(日本歯科再生医療協会)に師事し、この治療を実際に行っている立場から、現時点でわかっていることを正確にお伝えします。

■歯髄とは何か、なぜ重要なのか?

歯髄とは、いわゆる「歯の神経」です。ただし神経だけではなく、血管・リンパ管・幹細胞が集まった複合組織です。歯に栄養を届け、外部刺激を感知し、象牙質の形成を継続的に担っています。
歯髄が失われると、歯は栄養供給を断たれた「枯れ木」状態になります。もろくなり、ひびが入りやすくなり、長期的な歯の予後が低下する。これが抜髄(神経を取る処置)の本質的なデメリットです。
特に成長期の若い患者さんでは、この影響がより深刻です。歯根がまだ完成していない段階で歯髄を失うと、根の発育が止まり、歯根が薄く短いまま固定されてしまう。長期的に歯を維持するうえで、大きなハンデを背負うことになります。

■実際の症例:13歳女児、転倒による外傷性歯髄壊死

先日、13歳の女の子の「歯髄移植」を行いました。
転倒により左上1番(前歯)を強く打ち、しばらくして歯が変色してきたとのことで受診。精査の結果、外傷による歯髄壊死と診断しました。
術前のデンタルX線では、左上1番の根管が隣在歯と比較して明瞭に描出されており、根尖部の透過像も認められました。歯根はまだ完全には成熟しておらず、このまま通常の根管治療(抜髄・充填)を行えば、根の発育はその時点で止まります。13歳という年齢を考えると、それは避けたい選択でした。
そこで、「歯髄再生治療からの歯髄移植」を選択しました。

ドナー歯から歯髄を採取・培養・活性化し、根管を徹底的に無菌化したうえで移植を実施。
術後のX線では、根管内の状態が改善されて、根管内に歯髄移植されたことが確認できました。今後は定期的な経過観察を続け、歯髄の生活反応と根の発育を慎重にモニタリングしていきます。

13歳という年齢、そして前歯という部位。この症例で歯髄を取り戻す意味は、単なる「神経の保存」ではありません。
今後数十年にわたってその歯が機能し続けるための、根本的な土台を守ることです。


■私が行っている歯髄再生治療のプロセス

1. 歯髄の採取 ── 抜去予定の不要歯(親知らずなど)から歯髄組織を採取
2. 培養・活性化 ── 採取した歯髄幹細胞をバイオテクノロジーで増殖・活性化
3. 根管の無菌化 ── 移植を受ける歯の根管を徹底的に清潔化
4. 移植 ── 活性化した細胞を根管内に戻して、神経・血管の再生を促す

これらは、患者さん自身の細胞を使用するため拒絶反応のリスクが低く、自然な形で歯髄機能の回復が期待できます。

■適応条件について正直に話します

この治療はすべての患者さんに適用できるわけではありません。
・移植に使用できる不要歯(健全な歯髄を持つ)が存在すること
・移植を受ける歯の根管が十分に無菌化できること
・歯根の状態・解剖学的条件が適切であること

これらが揃って初めて選択肢になります。
また、移植後も長期的な経過観察が不可欠です。「受ければ必ず神経が戻る」という理解は現時点では正確ではなく、適応選択と無菌化精度が治療成績を大きく左右します。

■専門医として伝えたいこと

歯髄再生治療は、歯科医療における本物の進歩です。
しかし同時に、「今この歯をどう守るか」の判断が、治療の可否より先に来るというのが私の考えです。


う蝕でも外傷でも、まず歯髄温存の可能性を丁寧に検討する。それが困難な状況に対する次の選択肢として、歯髄移植があります。
治療方針についてご不明な点がある方、他院での診断にセカンドオピニオンを求めている方は、お気軽にご相談ください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ご予約・お問い合わせはこちら
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
初診予約・治療相談に関するお問い合わせはこちらから↓

三鷹・東京で精密根管治療をお探しならハートフル歯科|無菌化で再発防止

「すべては患者様の笑顔のために」

本山直樹

医療法人社団徹心会ハートフル歯科