移植後の根管治療について
こんにちは
ハートフル総合歯科グループの野田裕亮と申します。
今回は歯牙移植の手術後の治療の流れについてお話します。
歯牙移植についての記事は以前からブログやYoutubeにU Pしていますので、
そちらをご覧ください。
https://heartful-konkan.com/tag/dr-野田/
移植手術を従来法やレプリカ法を用いて行った後、
固定期間を経て根管治療、被せ物の治療へと進みます。
移植後の固定期間については前回のブログ
https://heartful-konkan.com/blog/dr_noda/17049
をご覧ください。
今回は移植後の根管治療についてお話します。
通常、親知らずを他部位へ移植する際、一度口腔内から親知らずを取り除きます。
その際に歯の神経が死んでしまうため、移植した先で失活歯(神経が死んでしまっている状態)になります。
感染を起こしているわけではありませんが、失活したままの状態では、
歯根破折のリスクや根尖性歯周炎(根っこの病気)のリスクが懸念されるため、
根管治療により失活した(死んでしまった)神経の治療を行います。
一般的な根管治療は根管の数や炎症の状態により治療の回数や期間が異なりますが、
先ほどもお話したように失活しただけの根管の根管治療のため、むし歯や炎症はありません。
そのため、根管をきれいにする→根管充填をする(根のお薬を詰める)のみです。
根管治療に回数が何度もかかるわけではないので、移植後の動揺度や歯周組織の回復を待ちながら根管治療(1〜2回)
を行っていくのです。
もちろん、元は親知らずの歯。
根管の形態も複雑なものが多いため、マイクロスコープを用いた根管治療は必須といえるでしょう。
移植後に長期的な歯根の安定を図るため、しっかりとした根管治療を行っております。
根管治療スタート
マイクロスコープで根管内を清掃
根管充填によりお薬を詰めます
これで根管治療の終了です
先ほど「通常」というように書いたのは、根管治療が不要な場合があるからです。
根管治療が不要であれば、その後の被せ物も必要ありません。
つまり、歯牙移植したらそのまま終了となります。
どういった歯がその適応となるのでしょうか?
それは「歯根未完成歯」です。
歯が萌出してから2〜3年は歯根が完成するまでに時間がかかります。
10代〜20代前半の場合、ドナー歯の歯根が未完成であれば移植後に移植した場所で
歯根が生長することが期待できるため、神経も生きたまま残ります。
移植する場合には第1選択したい歯ですよね。
(もちろん100%根管治療が不要なわけではありません。神経が弱くなり、
失活に至るケースもありますので事前にリスクについてのお話をする必要があります。)
若年者は骨の成長がまだ完了していないため、インプラント治療は禁忌となります。
そのため、歯を削らない治療となれば第1選択の治療となるでしょう。
しかしこの若年者のタイミングで欠損になることがあまり多くないこと。
歯牙移植の手技が難しいこと。術後の予後が読みにくいこと。
未成年の場合、患者ご本人と親御さんのご了承が必要なこと。
以上のことからどの歯科医院さんでも行っている治療ではないので、
「歯牙移植」を知らない方も少なくはないでしょう。
しかし、歯牙移植によってブリッジを回避できたり、インプラントにせずとも隣在歯を削らずに済んでいる方がいるのは事実です。
噛み応えも今まで同様しっかり噛めている方がいらっしゃるのも事実です。
今までの生活と変わることなくお食事がとれることは1番の治療法だと私は思います。
保存不可能だと診断された方、一度歯牙移植が可能かご相談ください。
1本でも多くの歯が残せますように・・・。
次回は移植歯の根管治療後の被せ物についてお話していきます。