歯牙移植症例集2024①〜手術編Ⅰ〜
みなさんこんにちはハートフル歯科総合グループの野田裕亮です。
今回から歯牙移植症例集2024①~手術編~をお送りします。
今回お送りする歯牙移植は保険の効かない自費歯牙移植となります。
前回のブログでは~術前編~として
保険が効かない歯牙移植についての説明や
実際の症例患者さんの状態と治療計画についてお話しました。
前回のブログはこちらから
今回は~手術編Ⅰ~
実際の手術についてお話していきます。
それでは前回のあらすじです
患者さんは年齢は50代女性で十数年前に歯の欠損をした欠損部分への
歯の移植を希望されています。
欠損部への歯の移植のため保険適応となりません。
CTによる診断で2本奥の親知らずが移植ドナー候補の歯として適応と判断し、
歯牙移植の計画を立てました。
・CTデータによる歯牙レプリカの作成
・移植歯への再生療法の併用
を事前準備として行い、移植当日を迎えます。
麻酔を行なったら
まず移植床の形成を行います。
メスで歯肉を切開して
歯肉を剥離します
続いてインプラント用ドリルにて骨に穴を開けます
ファーストステップのドリルは歯の移植したい方向へ予定通りの深さまで掘ります。
今掘った穴が正しい方向に掘れているか指示棒を入れて確認します。
掘った方向に問題がなければドリル切削を進めていきます。
無注水の低回転ドリルにより慎重に移植床の形成を行います。
私は移植床形成の際に無注水の低回転ドリルを使うことが多くあります。
通常インプラントドリルを使用する際には注水下で高速回転によりドリル切削を行います。
高速回転で行うのはドリルがブレないようにするため。
そして注水下で行うのは高速回転時の発熱を抑えるため。
発熱により骨にダメージが加わってしまうと骨の吸収を進めてしまい、
インプラントや移植歯の結合を妨げてしまうのです。
そのため注水下高速回転が一般的なのですが、
私が無注水低速回転を使う目的は「自家骨採取」にあります
歯牙移植の場合、歯の大きさは10~12mm前後
インプラントのフィクスチャー(人工歯根)に比べてルーズであっても問題ありません。
低速回転によるドリルのブレはそこまで問題視されません。
それ以上に無注水であることで切削した時に出る切削片(自家骨)が採取できます。
自家骨や人工骨を骨補填剤と呼びますが
骨補填剤に要求される特性として
・骨形成能:移植骨中の細胞自体が増殖し、直接骨を形成する能力
・骨誘導能:未分化間葉系細胞が骨芽細胞に分化し骨形成を誘導する能力
・骨伝導能:細胞が骨を形成するための足場としての能力
と大きく分けて3つの機能があります。
人工骨の場合は骨伝導能があってもものにより骨誘導能はあったりなかったり。
骨形成能は自家骨にしかありません。
エムドゲイン(再生療法製剤)も使用しますが、自家骨はこれ以上ない最高の再生療法製剤。
移植歯が生着するためには自家骨の利用は有効だと考えています。
話が逸れてしまったので手術編の続きは次回行います。
あなたの歯が1本でも多く残せますように・・・