それでも、私はこの歯から目をそらさなかった─【第4話】右上1・2番の治療結果から私が学んだこと─
こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹です。
私は歯内療法専門医として、
「根管治療がなかなか治らない」「できる限り歯を残したい」
と悩まれている方に向けて、臨床症例を通して、
治療の考え方や判断の背景をこのブログでお伝えしています。
ここまでの振り返り
このシリーズでは、
右上1・2番という保存が極めて難しい条件を抱えた歯について、
• 第1話:それでも治療を始めると決めた理由
• 第2話:なぜ、この歯は治らなかったのか
• 第3話:それでも無菌化を目指した治療戦略
これらの話をお話ししてきました。
そして今回は、
治療の経過と結果、さらにこの歯が私に教えてくれたことについて、正直にお伝えします。
治療の結果について
まず大切なことを、はっきり書きます。
この症例は、
「簡単に治った」ケースではありません。
治療を進める中で、
• 改善が見られた部分
• 期待したほど反応が得られなかった部分
その両方がありました。
症状は段階的に落ち着き、
少なくとも治療前の状態よりは、明らかに良い方向に向かいました。
しかし同時に、
この歯が抱えていたダメージの大きさも、
改めて突きつけられる結果となりました。

高周波電流治療による根尖部の不良肉芽を焼灼しています。

さらに根管内をアクティベーション洗浄によって徹底的に消毒。
これらの根管洗浄を繰り返します。

「治った/治らなかった」だけでは語れない
患者さんが一番気になるのは、
「結局、治ったのか?」という点だと思います。
ただ、歯内療法では、
結果を白か黒かだけで評価できない症例が存在します。
• 痛みは取れたが、経過観察が必要
• 機能は保てているが、将来のリスクは残る
• 今は安定しているが、永続的とは言えない
今回の右上1・2番も、
まさにそのラインにある歯でした。
それでも「治療してよかった」と思える理由
この症例を振り返って、
私自身が強く感じていることがあります。
それは、
「やらなければ、もっと後悔が残った」ということです。
• なぜダメだったのか
• どこまで可能性があったのか
• どこが限界だったのか
これらを、
患者さんと共有できたこと自体が、この治療の大きな意味でした。
患者さんと共有した「現実」
治療の途中でも、私は何度も説明しました。
• 良い兆候が出ていること
• それでも楽観はできないこと
• 将来、方針を変える可能性があること
希望だけを語らず、現実から目をそらさない。
それが、難症例で私が一番大切にしている姿勢です。
歯を残す治療とは「結果」ではなく「過程」
私は、歯を残す治療を「成功か失敗か」で語るのが好きではありません。
本当に大切なことは、
• 納得した上で選択したか?
• 情報をきちんと共有できていたか?
• ごまかしのない治療だったか?
これらについて、考えています。
今回の症例では、
そのすべてを、患者さんと一緒に積み重ねることができた。
そのように感じています。
この歯が、私に教えてくれたこと
この右上1・2番は、
私に改めて教えてくれました。
• 治療は「技術」だけでは完結しない
• 判断から逃げないことの重さ
• 患者さんと向き合う覚悟の意味
そして、
「それでも治療を始める」と決めることは、
結果を引き受ける覚悟そのものだということを…
「治らない」と言われた歯で悩んでいる方へ
もしも今、
• 根管治療が長引いている
• 何度も治療しているのに改善しない
• 抜歯と言われて迷っている
そのような状況にあるならば、
一度、立ち止まって考えてほしいと思います。
「本当に、自分は納得してこの選択をしているか?」
歯を残すかどうか以上に、納得できるプロセスが、これからの後悔を減らします。
最後に
すべての歯を救えるわけではありません。
それでも私は、向き合う価値がある歯から、目をそらさない歯科医師でありたいと思っています。
「それでも、私は治療を始めると決めた。」
この言葉の重さを、これからも一症例ずつ、積み重ねていきます。
シリーズを読んでくださった方へ
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
このシリーズが、どこかで誰かの判断の助けになれば、それ以上の喜びはありません。
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「すべては患者様の笑顔のために」
本山 直樹



