神経を抜いた歯に、再び“生命”を宿す─専門医が実践する歯髄再生治療
40代男性、抜髄後の違和感を訴え来院。無菌化根管と幹細胞移植で回復した症例をご紹介します
こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書いております。
「この歯、もう神経を取るしかないって言われました。でも…それで本当にいいんですか?」
40歳の男性患者さんが、そう語って当院を訪れました。
他院で右下の奥歯(6番)に抜髄治療を受けたものの、
「何かがおかしい」と違和感を感じたまま日常を過ごしていた…その違和感の正体は、「歯の生命を失ったことへの葛藤」でした。
今回は、抜髄済みの歯に対して“再び歯髄を宿す”歯髄再生治療に取り組んだ実例をご紹介します。
【術前】
【症例概要】
患者:40歳 男性
主訴:他院で右下6番の抜髄治療後、違和感が残り「歯髄再生ができるならしてほしい」と希望
診断:下顎右側第一大臼歯 他院にて抜髄処置済み 生活歯の機能喪失/症状軽度
【治療の方針と課題】
通常、一度抜髄した歯に対して歯髄再生治療を適用するのは極めて難しいとされます。
特に40歳という年齢、根管内の石灰化や血流の再建難度などから、適応が厳しいのが現実です。
しかし、患者さんの「自分の歯の感覚を取り戻したい」という強い想いと理解力、そして既に行われた抜髄が比較的低侵襲だった点などから、慎重に適応を検討。
「完全無菌の根管」を再構築し、そのうえで再生誘導に挑戦する価値があると判断しました。
【根管拡大・清掃後】
<Step1:無菌化再処置>
・マイクロスコープ下における根管治療
・残存感染源の徹底除去
・超音波洗浄+EDTAとNaOClの交互洗浄
・ペーパーポイント検査と培養で細菌陰性を確認
・二重仮封 → 2週間後に再検査し、無菌性維持を確認
【根管洗浄・消毒における無菌化】
<Step2:歯髄再生誘導処置>
・歯髄由来幹細胞をラボで培養
・コラーゲンゲルと混合し、歯髄幹細胞を無菌化根管内に注入
・バイオデンチンで封鎖・完全閉鎖
・治療後は歯髄の生活反応について診査、診断レントゲンによる定期的な経過観察
【マイクロスコープ歯髄移植】
【歯髄幹細胞】
【歯髄移植後】
【結果】
1週間後:
・歯髄電気診(EPT)及び冷温診により、歯の生活反応の有無を検査
→微弱だが感覚反応を確認したが、術後間もないため再現性の有無について確認する必要があると判断。
次回以降引き続き診査・診断へ
1ヶ月後:
・前回より確実な感覚反応あり(EPTテスト)
・隣接歯とはまだ若干違うところがあるが、
感覚としてはぼんやりと感じる←歯髄移植成功の可能性あり
・レントゲンにおける骨内状態も良好で、炎症兆候なし
→現在、引き続き経過観察中となります。
3、6ヶ月後、1年後と歯の状態を確認予定となっております。
【まとめ】
今回、歯髄再生治療に歯内療法専門医として、無菌化に至るまでの試行錯誤を繰り返しながら、本症例が教えてくれました(*’ω’*)
「希望を捨てなかった人の歯は、もう一度生き返る可能性がある」ということ。
もちろんすべての条件が整っていたわけではありません…
しかし、正確な診断と無菌化処置、そして患者さんの協力と熱意によって、歯髄再生は可能な現実になりました。
私たちは、年齢や過去の処置で“可能性”を閉ざすことはしません。
その歯に、まだ生き返れる可能性が少しでもあるのならば…私たち、ハートフル歯科は自分たちにできる最大限の治療に努力を惜しまないことを心がけています٩( ‘ω’ )و
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「すべては患者様の笑顔のために」
本山 直樹