それでも、私は無菌化を目指す─【第3話】右上1・2番、難症例に対する治療戦略─
こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹です。
私は歯内療法専門医として、
「根管治療がなかなか治らない」「できる限り歯を残したい」
と悩まれている方に向けて、臨床症例を通して、治療の考え方や判断の背景をこのブログでお伝えしています。
第2話までの整理──原因が分かっても、治るとは限らない──
前回の第2話では、「右上1・2番の根管治療がなぜ治らなかったのか?」について、構造的・感染的な原因について整理しました。
• 長期間続いた感染
• 大きく破壊された根尖
• 根尖開大
• コアの位置による無菌化の妨げ原因は、はっきりしています。
ただし──
原因が分かったからといって、必ず治せるわけではありません。
それでも、私がこの歯で目指したのは「中途半端な改善」ではなく、「無菌化」でした。
無菌化とは「きれいにすること」ではありません
患者さんから、よく聞かれる言葉があります。
「しっかり消毒すれば、治るんですよね?」
実は、ここに根管治療がうまくいかなくなる大きな誤解があります。
無菌化とは、
✅薬をたくさん使うこと
✅回数を増やすこと
✅強い消毒をすること
このようなことではありません。
「細菌が生きられない環境を、根管の中につくること」
それが、私の考える無菌化です。


根管内をむし歯に対して染まる染色液で確認して、徹底的に除去しています。
なぜ、この症例でも無菌化を目指したのか?
右上1番は、
根尖の破壊が大きく、一般的には
「ここまで進んだら保存は難しい」
と言われやすい歯です。
それでも私が無菌化を目指した理由は、
感染の“原因”が歯の外ではなく、歯の中にあると判断できたからです。
• 根管内にアプローチできる余地がある
• 感染経路が整理できている
• 外科的な介入を考える前に、やるべきことが残っている
条件は厳しい。
しかし、戦略を間違えなければ、勝負できる余地はある。
そのように判断しました。
「普通の再根管治療」をしなかった理由
この症例で、私が強く意識したのは、
前と同じことを繰り返さないという点です。
• 見えているところだけをきれいにしない
• 触れやすい根管だけで満足しない
• 「ここまででいいだろう」と妥協しない
再治療では、
“届いていない場所”にこそ問題があることがほとんどです。
だからこそ、一手一手に対して、
「なぜ、ここを触るのか」と自分に問いながら進めました。
2番の歯で、特に慎重になった理由
右上2番では、根尖開大に加えて、
コアの位置が無菌化を妨げる大きな要因になっていました。
構造的に不利な歯では、少しの判断ミスが再感染につながります。
だからこそ、
• 見えない部分をどう扱うか
• 何を残し、何を変えるか
• 無理をしていないか
これらを、常に確認しながら治療を進めました。
難症例ほど、派手なことはしない。
基本を、徹底的に外さない。
それが、私の治療方針です。
無菌化を目指すことは、約束ではない
誤解してほしくないのは、
無菌化を目指す=必ず治る
ではないということです。
私はこの症例でも、
「必ず治ります」とは言っていません。
代わりに、
• なぜ無菌化を目指すのか
• どこが限界になりうるのか
• どこで判断を変える可能性があるのか
これらを患者さんと共有しました。
治療は、希望と現実のすり合わせです。
それでも、この歯に向き合う意味がある
ここまで条件が悪くても、
「何もしない」という選択肢もありました。
それでも私は、
この歯に向き合う意味はあると判断しました。
なぜなら、ここで中途半端に諦めることが、患者さんにとって一番つらい結果になる可能性があったからです。
次回:治療の結果から私がこの歯から学んだこと
次回はいよいよ、
この治療の経過と結果についてお話しします。
• 無菌化はどこまで達成できたのか
• 症状はどう変化したのか
• 保存できたのか、できなかったのか
そして、この歯が私に教えてくれたことを、正直にお伝えします。
「それでも治療を始める」
その先に、何があったのか──
次回、最終話です。
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「すべては患者様の笑顔のために」
本山 直樹



