それでも、私は治療を始めると決めた。─【第1話】「治らない」と言われた右上1・2番の根管治療─
こんにちは。
新年あけましておめでとうございます。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
私は歯内療法専門医として、
「根管治療がなかなか治らない」「できる限り歯を残したい」
と悩まれている方に向けて、日々の臨床症例を通して感じたことや、ときには「それでも治療を始めるべきか」を真剣に悩み、判断した歯について、これらのブログでお伝えしています。
実際の診療の現場では、
「他の歯科医院で根の治療を続けているけれど、なかなか治らないんです」
というご相談を受けることが、決して少なくありません。
そのような相談の多くは、単に治療が足りないのではなく、「なぜ治らないのか」がきちんと整理されていないことに原因があります。
特に、前歯の根管治療(神経の治療)は見た目の問題もあり、患者さんの不安はとても大きくなりがちです。
今回ご相談を受けたのは、右上1番・2番。
55才 女性の方です。
すでに他院で根管治療の途中でしたが、症状が改善せず、当院を受診されました。
レントゲンを見た瞬間、私は正直に思いました。
──これは、かなり条件の厳しい症例だ…
レントゲンが示していた「厳しい現実」

右上1番は、根の先(根尖)が大きく破壊されていました。
骨の吸収範囲も広く、一般的な判断では
「ここまでくると、歯を残すのは難しい」
このように言われても不思議ではありません。
右上2番も問題を抱えていました。
根尖は開大しており、さらに土台(コア)が頬側方向にずれて入っている状態。
これは、再根管治療を行ううえで非常に不利な条件です。
つまりこの症例は、
• すでに治療途中
• 根尖病変が大きい
• 形態的な問題が重なっている
「治らない根管治療」になりやすい条件が、ほぼそろっていました。
「やらない方がいい治療」が存在するのも事実です
歯科医療の世界では、
すべての歯を無条件に残せるわけではありません。
特に、
✅再根管治療
✅根尖病変が大きいケース
✅何度も治療を繰り返している歯
これらの場合には、成功率が下がることも事実です。
だからこそ、
「抜歯を含めた治療計画を提案する」
という判断自体は、決して間違いではありません。
実際、私自身も「本当に保存を目指すべきか」何度も自問しました。
それでも患者さんは「歯を残したい」と言った
この症例で、私の心を動かしたのは、患者さんの言葉でした。
「できる限りでいいので、自分の歯を残す方向で考えてほしいんです」
この一言には、
・見た目への不安
・抜歯への恐怖
・これまでの治療で積み重なった不信感
さまざまな思いが詰まっています。
専門医として大切なのは、
“正論を押しつけること”ではなく、
“現実を正しく伝えた上で、選択肢を示すこと”
だと私は考えています。
なぜ「それでも治療を始める」と決めたのか?
この症例で、私が再根管治療を引き受けると判断した理由は、ひとつではありません。
• 根管内に、まだ適切な処置を行える余地がある
• 感染の原因が、構造的にある程度説明できる
• 無菌的な環境で、再治療を行える体制がある
• 患者さんが、成功しない可能性も理解した上で希望している
「治る保証はないが、やる意味はある」
このラインに、まだ踏みとどまっている歯だと判断しました。
私が難症例で「約束しないこと」「約束すること」
私は、難しい根管治療を引き受けるとき、
「必ず治ります」とは言いません。
代わりに、次のことだけは必ず約束します。
• 治療の限界をごまかさない
• ダメな可能性も正直に伝える
• 一手一手、理由のある治療を行う
歯を残す治療とは、
“無理に残すこと”ではありません。
“納得した上で挑戦すること”であると考えています。
それでも、この歯から目をそらしたくなかった
右上1番・2番。
決して簡単な症例ではありません。
それでも私は、
「この歯は、まだ“挑戦する価値がある”」
そのように判断しました。
治療を始めるということは、
患者さんの期待も、不安も、すべて引き受けるということです。
だからこそ、
私はこの症例から逃げず、
真正面から向き合うことにしました。
次回:なぜこの歯は「治らなかった」のか?
次回は、
• なぜ根尖病変がここまで拡大したのか?
• なぜ通常の根管治療では改善しなかったのか?
• 無菌的根管治療で何を変えるのか?
以上のことを、治療中の写真とともに詳しく解説します。
「治らない」と言われた歯に、それでも治療を始める理由̶̶
その続きを、お話しします。
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「すべては患者様の笑顔のために」
本山 直樹



