こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書いております。
今回は、唾液や細菌による感染から歯を守る「隔壁」について、専門医の立場からまとめたものを解説していきたいと思います。
抜髄や感染根管治療を必要とする歯において、程度の差こそあれ、ほとんどの症例で歯の実質欠損を伴っています。それらに対して、「隔壁」と呼ばれるコンポジットレジンなどの材料を使用して壁を作成する処置を行います。


根管治療における隔壁(かくへき:coronal barrier, walling)の意義は、治療の成功率を高めるうえで極めて重要です。以下に、臨床的な観点からその目的と効果を体系的に解説します。

1. 隔壁の基本的な目的

隔壁とは、根管治療中に唾液や細菌が根管内へ再侵入するのを防ぐ人工的な壁を指します。
主な目的は以下の3点です:

❶唾液による汚染防止(防湿効果)
ラバーダム防湿を行っても、う蝕や欠損の大きい歯では唾液の侵入リスクが残ります。隔壁はこの「漏れ」を物理的に防ぎ、根管内の無菌状態を保ちます。
❷薬剤・洗浄液の保持
NaOClやEDTAなどの洗浄液が漏れ出すことを防ぎ、洗浄効果を最大化します。
❸治療時の視野確保・器具操作性の向上
隔壁を形成することで、歯冠の形態を一時的に再現し、拡大鏡下での作業効率を高めることができます。

2. 無菌的治療環境の維持

隔壁は、「根管の無菌化 → 再感染防止」という根管治療の本質に直結します。根管内をどれほど清掃・消毒しても、上部からの唾液汚染があれば再感染のリスクは急増します。
以下のような場合には
・大きなう蝕や歯冠崩壊を伴う場合
・旧修復物除去後に残存歯質が少なくなる場合
・根管治療を数回に分けて行う場合(一定の仮封期間)
隔壁があることで、仮封のマイクロリーケージ(微小漏洩)を抑制できます。
つまり、「初回で得た無菌状態を最終的な根管充填まで維持」することが可能になります。

3. 隔壁の臨床的メリット

❶治療精度の向上
洗浄・貼薬・充填操作が正確に行える。
❷再感染リスクの低減
治療途中の感染リスクが格段に減る。
❸再治療率の低下
仮封やセメントの劣化によるリークを予防できる。
❹患者の再来時の環境が安定
複数回治療でも前回の状態を維持できる。

4. まとめ

隔壁は「封鎖」だけではなく、根管治療の無菌環境を支える防壁そのものです。
ラバーダムと隔壁は、治療の精度・清潔性・成功率を支える「二本柱」。
時間をかけてでも丁寧に形成する価値があります。
隔壁は、見えないところで歯を守る「小さな城壁」です。
この一手間が、治療の成功と再感染の防止を大きく左右します。
私たちは今日も、その“見えない努力”を大切にしています。
隔壁の精度こそ、根管治療の成否を分ける第一歩です。
唾液や細菌の侵入を完全に防ぐ環境づくり٩( ‘ω’ )و
それが「無菌化根管治療」の原点であり、私たちの信念です。

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「すべては患者様の笑顔のために」

本山 直樹

医療法人社団徹心会ハートフル歯科