こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書いております。
今回は前回からのブログの続きです。

前回のブログはこちら↓

第4回歯髄再生医療研究会in神戸①

第4回歯髄再生医療研究会in神戸②

本記事では、4名の先生方の素晴らしい講演の中で、私が特に興味深く感じた2名の先生の講演内容にフォーカスしてまとめたものをもって、今回の症例検討会の学びとさせていただきたいと思います。
二人目は、田中 宏幸先生(名古屋RD歯科クリニック)です。
講演内容は、「根尖病変を伴う症例における歯髄再生治療の移植タイミングと成功率向上のポイント」でした。
田中先生は、2025年9月現在、歯髄再生治療を74本の歯に実施しており、成功率は100%を維持していると仰られていました。
経過観察も含めた長期的な感染予防には、適切な隔壁により、細菌の再侵入を防ぎ、経過観察中のトラブルを防止することが重要であるということ。
また、根尖病変を有する症例における移植のタイミング、根管洗浄から細菌陰性化(無菌化)までの回数などについても報告していただきました。

歯髄再生が広がる今、問われる「どこまで治せるのか?」

歯髄再生治療が注目を集める中、臨床現場では「根尖病変がある歯にも適応できるのか?」という疑問を持つ先生方は多いと思います。
先日、名古屋RD歯科クリニックの田中 宏幸先生が講演された内容は、まさにその問いへの実践的な答えでした。
52歳の成人から10代の若年者まで、根尖病変を伴う症例での再生成功率を高める工夫が、臨床のリアルとして共有されました。

除菌の精度が「成功率」を決める!

田中先生が最初に強調されたことは、
「移植よりも前に、除菌の精度がすべてを決める」という点でした。

印象的なポイントを3つ挙げておきます。

1. 隔壁形成を徹底する。
ラバーダムを併用して、漏洩や再感染を防ぐための壁を確実に作る。
「ここが不十分だと、どんなに良い細胞を入れても無駄になる」と田中先生より(*’ω’*)
※隔壁について詳しくはこちら ↓

2. 根尖部まで大胆に拡大する。
感染の取り残しを防ぐため、症例によっては#60~#80まで拡大。
特に成人の再治療例では、根尖が“開くまで”除去する姿勢が重要と語られていました。これらの考え方は、従来の歯内療法とは異なると思いました。

3. 次亜塩素酸を多量・交互に使用する。
EDTAとの交互洗浄を基本に、初回のみオキシドールも併用するとのこと。
洗浄液の反応を“泡の出方”で感じ取りながら、次第に菌の出現が消えるまで根気よく洗浄を続けるとのこと。田中先生の儀式的なものと仰られていました。

「除菌完了」の見極めと移植のタイミング

田中先生の症例では、平均して2回目の治療で菌が消失。
病変の縮小をCTで確認した段階で、早めに細胞移植へ移行されていました。
興味深いのは、半年後にはMRIで歯髄反応を確認して、問題がなければ早期に補綴へ進むという点。
長期経過を待ちすぎず、臨床的な「治癒傾向」を重視するスタンスは、まさに実践医の感覚です。

根尖病変を持つ歯髄再生の現実と希望

講演中では、外傷による失活歯やパーフォレーションを伴う症例も紹介されましたが、
いずれも「見える範囲で肉芽を徹底除去」して、内部から病変にアプローチすることで良好な経過を得られています。
特に印象的だったのは、10代の前歯症例。
脱臼や固定の影響で吸収を起こしていた歯に対しても、再生治療によって骨様硬化像が形成されつつあるという報告でした。

結論:再生治療の鍵は「丁寧な下準備」にある

田中先生の症例を通じて見えてきたのは、
細胞移植そのものよりも、それを受け入れる“環境作り”の重要性です。

• 隔壁作成
• 感染除去(機械的拡大+化学的洗浄)
• 病変縮小の確認

この3つの積み重ねが、結果として“100%成功”という言葉につながっていました。

歯髄再生は、特別な魔法ではありません。
むしろ、基本の徹底こそが未来の歯を救う力にな──そのようなことを感じさせられる講演内容でした。
今回の神戸で行われた第4回歯髄再生医療研究会において、再生医療の「理論」だけでなく、その根底にある“現場の手技と覚悟”を改めて実感しました。
歯髄再生は奇跡ではなく、日々の丁寧な一手一手の積み重ねから生まれる臨床の成果です。
私自身も、明日の診療で一つひとつの工程をさらに磨き上げていきたい──そんな想いを強く感じた講演会でした。

歯髄再生医療研究会にて講演を通じて貴重な知見を共有してくださった中島 美沙子先生、また今回講演していただいた先生方、そして歯髄再生医療協会の皆様に、改めて心より感謝申し上げます。

ハートフル歯科では、象牙質・歯髄再生に関するご相談を随時受け付けています。
再生医療に関心のある方は、まずはお気軽にご相談下さい。

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本山 直樹

医療法人社団徹心会ハートフル歯科