こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書いております。
今回は、「初めての歯髄細胞移植に向き合って」と題しまして、現在の歯髄再生治療における近況や気持ちについて書いてみました。

再生医療という言葉が、もはや特別な響きを持たなくなってきた時代。
それでも、実際に自らの手で“再生”の一端を担う治療に携わる瞬間は、心が震えるほどの重みと責任を感じます。
今回、私は初めて歯髄細胞移植の実臨床に取り組むことになりました。これまで、歯髄という小さな組織の中に秘められた再生能力に強く魅せられてきました。幹細胞が、損なわれた神経や血管を再び呼び起こし、壊死した歯に「生きる力」を取り戻す──まるで歯が自ら蘇っていくかのようなプロセス。その研究や臨床報告を追いながら、いつか自分の手でも…と、静かに夢を育んできたのです。
実際の工程を学んでいくと、ひとつひとつが非常に繊細で、技術力だけでなく倫理観や安全性への配慮、そして何より患者さんの未来に向き合う覚悟が問われます。

歯髄細胞移植は、次のようなステップで行われます:
1. 健全な抜去歯(多くは親知らず)から歯髄を採取
2. 酵素処理で幹細胞を分離し、無菌下で約2ヶ月程度かけて培養・増殖
3. 無菌・遺伝子安定性・幹細胞マーカーなどの品質検査
4. (必要に応じて)細胞の凍結保存
5. 移植対象となる歯の根管内を徹底的に清掃・洗浄・消毒
6. 培養細胞をスキャフォールド(足場材料:コラーゲン)と混ぜて注入
7. バイオデンチンなどで封鎖し、経過を画像や歯髄診査でモニタリング

特に、細胞とスキャフォールドを混ぜて根管に注入する工程は、再生の成否を左右する重要な場面です。無菌環境での丁寧な操作が求められ、
私は「この小さな一滴に、未来がかかっている」と強く感じました。
これが完璧な治療になるかどうかは、正直まだ分かりません。
ただ、確実に言えるのは、「再生医療は理論だけではない」ということ。
現場で向き合う一つ一つの判断、手の動き、そして何より“命へのまなざし”が試される領域だと実感しました。
今後は症例の経過や術後に感じた課題などもお伝えしていければと思います。
現場から、再生の希望を届けていけますように!

次回は、初めての歯髄細胞移植に向けて、歯髄再生治療チームにおける
細胞調整など事前シュミレーションを行った模様を書いてみました。
ご興味のある方は是非ご一読下さい♪

『鞠躬尽力、死して後已まん』-諸葛孔明-
(きっきゅうじんりょくして、ししてのちやまん)
【ひたむきに己の全力を尽くし、死ぬまで止めない覚悟である】
この名言は謙虚さ、誠実さ、全力投球、後悔のない生き方、そして充実感を追求する精神を伝えてくれる彼の卓越した哲学と人生観を示すものです。
「すべては患者様の笑顔のために」

医療法人社団徹心会ハートフル歯科