第31回JEA専門医セミナー受講
こんにちは。
ハートフル総合歯科グループの歯科医師、本山 直樹と申します。
私は、歯内療法専門医の立場から根管治療における臨床症例を通して感じたことをブログに書いております。
今回のテーマは、「歯内治療における疼痛を科学する」です。
先日、日本歯内療法学会第31回JEA専門医セミナーを受講してきました。
講演Ⅰ:痛みの原因が見当たらない時に考えるべきこと
あんどう歯科口腔外科 安藤 彰啓先生
講演Ⅱ:「イタイ」と訴える「患者」を生物心理社会学的に俯瞰する
九州大学病院口腔顎顔面外科顎口腔外科 坂本 英治先生
歯内治療(根管治療)は、多くの患者さんにとって「痛い治療」というイメージがあります。
まず最初に歯内治療における一般的な疼痛の原因について考えてみたいと思います。
①炎症反応
根管内の感染や炎症が歯髄組織及び周囲の組織に及ぶことで、痛みを引き起こします。特に急性
炎症の場合、疼痛は鋭く、持続的です。
②化学的・物理的刺激
治療中の器具操作や消毒薬の使用が、歯根膜や周囲組織を刺激することがあります。これらが一
時的な痛みを引き起こす原因になることもあります。
③噛み合わせ
治療後にクラウンや充填物が噛み合わせに干渉すると、痛みや違和感が生じることがあります。
ところが、患者が痛みを訴えていても、実際に診査をしてみるとどこにも異常が見当たらないこと
がある…
根管治療、咬合調整、抜歯などを行っても、まだ痛むと訴えることもあります。
安藤先生より、痛みは目に見えない「感覚(知覚)」である。
短絡的に「不定愁訴」や「精神的なもの」などと考えてしまうのは早計である。
なぜならば、見た目に異常がなくても、「知覚神経」に機能異常をきたしている場合があるから
と仰られていました。
痛みを3つに分類して、「原因不明」とされる痛みを診断するための必要な知識や糸口について
教えていただきました。
坂本先生は、原因がよく分からない、通常治療に反応しない歯の痛みに対するアンチテーゼとし
て、歯が原因ではない痛み(非歯原性歯痛)が近年注目される中、それらに対処してもうまくい
くとは限らないと仰られていました。痛みは「感覚的・情動的不快感」と定義され、特に慢性化
すると多彩な因子が絡んでいることが多いそうです。
慢性疼痛診療には生物医学的な「歯科」の診方と、生物心理社会学的な「患者」の診方の両者が
求められるそうです。
消えない痛みは、「イタイ」と不快感を訴える「患者」として慢性疼痛の診方で俯瞰すると理解で
きることもあるとのことでした。
今回のセミナー内容はとても奥が深く、最初は難しく感じましたが、非常に興味深い内容で先生
方の講演に聞き入ってしまい、時が経つのを忘れるほどでした( ゚Д゚)
本セミナーを通して、歯内療法における様々な疼痛の診断、適切な対応についてお二人の専門の
先生から学べたことは非常に有意義な時間となりました。
歯内療法専門医として必要な知識を整理し日々の診療に役立てていければと思いました。
『鞠躬尽力、死して後已まん』-諸葛孔明-
(きっきゅうじんりょくして、ししてのちやまん)
【ひたむきに己の全力を尽くし、死ぬまで止めない覚悟である】
この名言は謙虚さ、誠実さ、全力投球、後悔のない生き方、そして充実感を追求する精神を伝え
てくれる彼の卓越した哲学と人生観を示すものです。
「すべては患者様の笑顔のために」