見つけられなかった根管
こんにちは。
ハートフル歯科のドクターM
本山です。
今回は、「見つけられなかった根管」です
むし歯には急速に進行する「急性う蝕」と進行が遅い「慢性う蝕」があります。
慢性う蝕の場合には、生体の防御反応として歯髄腔内に第三象牙質(修復象牙質)が形成されて、痛みが発現しにくい状態となります。そのため、自覚症状がないことで歯科を受診することがないことになります。そして、発見が遅れる傾向にあります。
すると、歯髄腔内では石灰化が進行して根管の狭窄などが起こり、神経の治療が困難な状態になっていきます。通常は歯髄腔の天蓋を除去すると、髄床底に「ロードマップ」と呼ばれる各根管をつなぐ溝が観察されるのですが、石灰化などで分かりにくい状態になると言われています。今回の症例は、そんなむし歯からの生体防御反応における石灰化という先入観によってあるものが見えなくなってしまった症例です。
それでは症例です。
50才 女性
右下6番
銀歯の下にあるむし歯が見つかり、むし歯治療を開始したがむし歯が神経の入り口にまで達しており、神経を除去する抜髄治療が必要と判断して根管治療を行なったものです。
術前レントゲン写真です。
患歯は結構遠心方向に流れるような形をしています。
また、近遠心部において銀歯の下に虫歯と思わしき隙間や段差が確認できます。
最初に根管口明示をした時に遠心根の入り口が見つからなかったみたいです。
むし歯によって根管が石灰化したと考えたそうです。
実は、今回の症例は初回の抜髄治療時は当院の後輩ドクターが担当してくれました。
私はたまたま2回目に担当しましたので、今回が初見でした。
黄色の丸印部分にレジンがあるのですが、これが遠心根管口付近に張り出していて死角になっていました。一見分かりづらい状態でした。私にはレジンの張り出しが気になったので削合しました。すると、虫歯のような着色が出てきたので、その部分も削り落としました。そうすると、歯髄のカスのようなものが現れて、さらにジワーっと出血してきました。
出血している場所が画像で見るよりもずーっと遠心寄りにあったので、パーフォレーションと呼ばれる穿孔をつくってしまったかと思いましたが、ファイルを挿入して電気的根管長測定器を用いて確認してみました。パーフォレーションで見られるような出血に対しての反応ではなかったために、そのまま根管口をもう少しきちんと明示することにしました。黄色の矢印は遠心根の根管口を探すために超音波チップで探索した痕ですね。このまま掘り進むと本当に穴があきます( ̄^ ̄)ゞ
遠心根がしっかりと出てきましたね♪(´ε` )
近心根も含めて3根の機械的拡大と呼ばれる根管の清掃と消毒を行いました。
このように改めて確認してみますと、近心根と遠心根の距離が結構あることが分かります。
抜髄処置で根管が見つからないケースも高齢者などでありますが、基本は必ずあります。
まずレントゲン写真でよく確認することとマイクロスコープで注意深く観察することが大事であると思います。
当院は担当医制でありませんが、チーム医療として複数のドクターで患者様のフォローを行なっています。ハートフル歯科の強みが活きましたね(๑>◡<๑)
今日も一日頑張りましょう!
“すべては患者様の笑顔のために”
今後ともよろしくお願い致します。
本山 直樹